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犯人が見付かったと連絡が来た。
やはりこの新橋付近だったと。
隣にいる女が無表情を崩さずに伝えてきた。

「じゃあ私は現場に行くので」
「ああ」

彼女の持つ開いたままの携帯に着信が来ていた。
八月朔日はその画面を見つめたまま出ようとしない。
渋い顔をしている。

「出たらどうだ」
「……そうだな」

渋々電話に出た八月朔日はしかめっ面のままだ。

「3日後?仕事だ。 ……お前は昔っから無理しか言わない。その前に自分の心配でもしたらどうだ」
「……それは伝えておく。は? 私は公安の犬だぞ。……どうだったかな。また連絡する」

電話を切った八月朔日は、その様子を見ていた俺に視線を向けた。
何を見ているんだとでも言いたげだ。

「見世物じゃない」
「誰からだったんだ」
「……誰だったかな」

そうして彼女は現場へ向かっていった。
俺は一度本部へ戻って潜伏場所の選定と確保をすることにした。
街に溶け込む八月朔日はあまりにも自然で、素性を知らなければ普通の女性だ。

現場に着いた八月朔日は犯人の監視を始めた。
一時間ごとに一つのアルファベットだけが送られてくる。
事前の打ち合わせ通りだ。

こちらも準備に入る。
事前の視察で見つけたポイントに移動し、周囲の環境を視界を確認する。
こちらから双眼鏡で覗くようなことはしない。
俺が相手の立場であれば、今が一番警戒心が強いからだ。
今見付かったら全てが無駄になる。
こちらも気を落ち着かせて目標時刻を待つことにした。

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