何度調べてもナギさんに関して新しい情報を得ることは出来なかった。
何故だ…おかしい。
あれ程の技術を持っている人間があんなありふれた経歴であるはずがない。
「いらっしゃいませ、って安室さんか」
「ああ、久しぶりにね」
例の喫茶店に入ると彼女がカウンターで片付けをしていた。
どうやら客は僕しかいないようだ。
いつもの席。
カウンターの隅に当たり前の様に座った。
「もうすぐ店じまいをしようと思って。良い所に来た」
「良いタイミングでよかった」
「コーヒー?」
「ありがとう」
コポコポとお湯の湧く音がする。
ナギさんはコーヒーを淹れながら鼻歌を歌った。
「隣失礼しても?」
「ええ、喜んで」
太陽はすでに沈み込んでいて、ただ暗い夜空がそこにはあった。
彼女は僕の隣に腰掛けて、ココアを飲んだ。
コーヒーを飲み干して、俺は口を開いた。
「ナギさん、あなたがガンマンだなんて驚きました」
「この前の?」
「はい、もちろん」
「あれは偶然!自分でもびっくり」
あはは、とナギさんは笑った。
いや、違う。
この女は普通じゃない。
事件の後の銃の扱いも手慣れていた。
銃というものを身近な物として受け入れていた。
「あなたが僕の前に立ちはだかる可能性はありますか?」
「それは安室さん次第だ」
「それは怖いな」
「あはは」
そう言って彼女は僕のコップと彼女のココアを下げて片付けを始めた。
「私、そろそろ行かないと」
「奇遇ですね。僕も用事がありまして」
片付けを終えた彼女は店の扉を開けた。
店を出て、鍵を閉める彼女の背中を見る。
気付けば最初から違和感はあった。
ありきたりすぎるプロフィール。
そして彼女の父親。
彼女の同郷であるはずの部下が彼女のことを知らなかったという事実。
そして誰かと似たような人当たりの良さ。
「それじゃあまた」
「はい。また後で」
僕達はそうして背を向け歩き出した。