あの日から私たちは仮の兵舎に身を寄せていた。
作成途中だった第二号ニットはあの日燃えてしまった。
何となく無気力な日が続いていた。
立ち直るために、私にはもう少し時間が必要だった。
浩ちゃんを見るたびに私が泣いてしまって、申し訳なくて会わせる顔がなかった。
軍人たちからも心配されてしまって、申し訳なさ過ぎて部屋に籠ることが増えた。

久しぶりにお風呂に入れて、私は早めに布団に潜り込んだ。
最近は寝付きが悪く、天井の木目を目線でなぞることが多い。
その日も同じようにそうしていると、部屋の扉が徐に開いた。
私が殺されたところで、何かが変わるということはない。

「誰?」
「俺だ」
「百ちゃん?どうしたの?」
「お前が元気がないと聞いてな。様子を見に来てやった」
「優しいとこあるじゃん」

百ちゃんはゆっくりと扉を閉めて、枕元までやってきた。
顎の傷は完全に塞がっていて、傷跡だけが残っている。

「二階堂が死んだ所を見たんだな」
「…私結構平和なとこで生きてきたからカルチャーショックと、悲しみとかが一気に来て疲れちゃったみたい」
「……アイヌの金塊について話をして引き摺りこんだのは俺だが、今ならまだ下りられるぞ」
「もうちょっとしたら、また元気になれるからもう少し時間が欲しいだけなの。返したい恩があるから私はまだ下りたくないよ」
「お前がそう言うなら俺は止めない」

月明かりしかない部屋で、私は彼の表情をハッキリと読み取ることが出来ない。
あの病室で、私が彼を見下ろしていたのに今は逆だ。

「お前は首を突っ込みすぎない方がいい。また今回みたいになるだけだ」
「…私を連れ去りに来たんじゃないの」
「そのつもりだったが気が変わった。お前みたいな奴は師団に守られてる方がお似合いだ」
「そうだねー今の私じゃその方がいいかも」

初めて令和に戻りたいと思ってしまった。
それでも戻れないのだから仕方ない。

「また人が死んだとしたら、私はその死に際を覚えておきたい。今はそうなるための準備期間なの。だから私がそうなれたら、また誘ってくれてもいいよ」
「…ふん、俺が覚えてたらな」

そう言って彼は部屋から出て行った。
この金塊争奪戦に関わっている限り、またどこかで出会うだろうか。
その時はどんな顔で、どんな話をしようか。

- 24 -

mae top tugi
grief
ALICE+