浩ちゃんはいなくなったと思っていたのだが気付いたら戻ってきていた。
ただ耳が欠損していたのだが。
百ちゃんは完全に脱走したらしい。
何か聞いてないか質問されたが、何も知らないと言っておいた。


しばらくは仮宿で過ごす日々が続いた。
私はまた台所を借りてお菓子を作ってみたり服を作ってみたりして、何とか前の日常を取り戻しつつあった。
また誰かが死んだ時、目一杯悲しんで、もう一度立ち上がろうと決めていた。
元気になってよかったと、軍人たちが声を掛けてくれた。


しばらくすると夕張に移動となった。
つるみちゅは忙しいらしく、今回は主につっきーに着いて行くらしい。
メロンとかあるのかな〜
流石にまだないか。

夕張に来て、私はとりあえず観光でもしていろと言われてしまった。
着物の着方をつっきーに教えてもらって、着物で外に出かけることにした。
着物着るのだるいな…
街のおば様方から夕張について教えてもらう。
炭鉱のおかげで街が栄えていると聞いた。
つっきー達は夜になるとどこかに行ってしまうので私は大人しく寝る。
日中はおばさまたちとお話をしながらお昼を奢ってもらったりしていた。
ほぼヒモだ。


江渡貝君という贋作氏と協力関係を持つらしい。
わたしも時折つっきーに同行して江渡貝君の見張りと進捗確認を行うこととなった。

「がんばれがんばれ江渡貝君!大丈夫だから江渡貝君!」
「美優さんうるさいッ!!静かに踊っててください!!」

応援しながら踊ると怒られた。
声を出さず静かに踊っておいた。
ご飯を作っておくと文句を言いつつも完食してくれる。
技術職というのはやはりこだわりの強い人が多いな…


二日に一回のペースで江渡貝邸に通った。
今日も変わらず静かに踊っていると臭いと言われた。
ショック…
勅使河原さんは臭くないよ、と前山さんがフォローしてくれた。
泣いた。

とりあえずつっきーと風呂に行こうということになった。
私は一度仮宿にある着物に着替えてから行くこととなるので一旦お別れ予定だ。

「…お前が元気そうで安心した」
「あーその節は、ご心配をおかけしました…」
「お前がいる生活が当たり前で、勅使河原が未来から来た普通の女性だということを少し忘れかけていた」
「馴染めてたみたいでよかった!誰か亡くなったらまた悲しくなるけど、またもっかい立ち上がるから大丈夫」
「……勅使河原は強いな」
「そんなことないよ、撃たれたら死ぬし」
「そうじゃないんだが…まあいい…あ、財布忘れた」
「じゃあ私着替えてお風呂行っちゃうね〜また後で」

手を振るとつっきーが手を挙げて答えてくれた。
前までじっと見られるだけだったのでうれしい。

着替えてから銭湯に駆け込む。
私は長風呂派だ。
銭湯も温泉も大好き。
1時間は入っていられる。
ゆっくりお湯に浸かっていると地鳴りのような音がした。
一緒に浸かっていたご婦人がガスケだと教えてくれた。
ご婦人の夫は近くの商店でお店をやっているらしい。
石鹸を貸してくれたので上がったら寄っていこう。

風呂を出て、つっきーとの待ち合わせ場所に行ってみるがそこにつっきーはいなかった。
とりあえずご婦人のお店に寄ってから江渡貝邸に行ってみるか。
ご婦人のお店は雑貨屋さんらしく、色んなものが売っていた。
そうだ!
つっきーにハンカチあげよう。
何だかんだ私のこと保護してくれたのもつっきーだし。
折ればポケットに入るサイズの手ぬぐいを購入した。
無地で寂しいので刺繍を入れたいと言うと、裁縫セットを貸してくれた。
犬の絵を縫っておいた。




待ち合わせの場所でしばらく待つもやはりつっきーが来ない。
1時間近く待ってみるも音沙汰なしだ。
こういう時携帯がないのホント不便だなあ…

江渡貝邸に向かいつつ、事故があったという炭鉱を見学しに行く。
炭鉱の入り口が塞がれている。
何て残酷なんだ……
もしかしてつっきーもあれに巻き込まれていないだろうか。
嫌な予感がする。
あそこに突撃した方がいいだろうかと思考していると後ろから肩を叩かれる。

「勅使河原、待たせた…」
「つっきー…もしかして、巻き込まれてたの…」
「ああ…江渡貝も。残念ながら彼は救えなかったが」
「そう…そっか、帰ろっか」

つっきーは全身真っ黒で、墨まみれだった。
近くの水で手ぬぐいを濡らして、顔だけとりあえず拭いた。
宿に寄って軍服に着替えた。

移動途中、私もつっきーも黙っていた。
何を言えばいいのかわからなかった。
彼らはずっとこんな気持ちを繰り返しているんだ。
両手を組んで力を込めると、つっきーが上から手で包み込んでくれた。
涙が零れて止まらなかった。


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