街に下りて、まず銭湯に入った。
銭湯は所々違うところはあるけど、基本は令和と同じような形式だった。
外は寒いしお湯に浸かるだけでももう最高すぎる。
一緒に入っていた人と世間話をして交流を深めると、特別に石鹸を使わせてくれた。
手ぶらで来たと言ったらタオルもくれた。
ラッキー!

銭湯を出て、髪を乾かしながらとりあえず街を散歩してみる。
とにかく建物の高さが低いので空が広く感じる。
私の恰好が珍しいらしく、すごく見られているが気にしたら負けだ。

どうやら本当に明治時代だ。
銃を持った明らかな軍人がそこらで歩いていて滅茶苦茶緊張感がある。
やはり銃社会は怖い…
軍人にもジロジロと見られ、マジで怖い。
急に撃たれたら流石に反応しきれない。

適当に道を歩いていくが、さっきからずっと尾行されている。
おなかも減ってきた…
適当にお蕎麦屋さんに入る。
お金を払うとうまい蕎麦が出てきた。
滅茶苦茶うまい!
軍人は入って来ないし、もう諦めてくれただろうか。
ㇼパちゃんから貰った金が尽きたので困った。

「あのすみません」
「なんだい」
「ここで働かせてもらえませんか…?」
「…別のとこあたりな」

普通に断られた。
泣きそう。
仕方ないので店を出ると軍人がそこに立っていた。
顔が滅茶苦茶怖い。
でも私よりだいぶ背が低い。
しかしガタイがいいので強そうだ…

「お前、どこの人間だ」
「東京…いやこういうことじゃないのかな?なんだろ、普通にフリーランスで働いてましたけど?」
「その恰好は何だ。娼婦でもないんだろ」
「違います!マジ勘弁して下さい…私これから働くとこ探さないとなんで…」
「……それならいいとこを知っている。着いてこい」
「行く行く!」

軍人が歩き出したので私もそれに続く。
軍人の名前は月島というらしい。
何回も名前を聞いたら教えてくれた。

「つっきーこれどこ向かってるの?」
「…その呼び方止めてくれ」
「つっきーは軍人なんだよね?今って戦争とかしてんの?」
「日露戦争はもう終わった。知らんのか」
「そうなんだ。つっきーも戦争行ったの?」
「ああ、旅順などにいたな」
「やば…マジなんだ…泣いていい?」
「何でだ」
「だって戦争ってめっちゃ悲しくない?無理なんだけど」
「はぁ…」

戦争のことを思うと滅茶苦茶悲しいので涙が出る。
令和じゃ戦争を生き抜いた人なんてもうほとんどいない。
聞くのはその悲惨さと絶望だけだ。
戦争に行った人がこうして生きていることが私にはもう涙涙なのだ。

「着いたぞ。もう泣くのやめろ」
「うぅ…ここどこなの…?」
「小樽にある第七師団の本拠地だ」
「へぇー…?」

よくわかんないけどどこかに着いたらしい。
中には軍人しかいないらしく、軍服を着た人間しかいない。
つっきーの後ろについて建物の中に入っていく。
荷物を渡すように言われたので素直に従う。

部屋の中に入るよう促され、中にあった椅子に腰かける。
滅茶苦茶喉が乾いたと伝えると、あとで茶をよこすとつっきーに言われた。
つっきーは私を軍に連れてきて何がしたいんだろう。
いや、珍妙な恰好をした私が万が一国賊であれば殺せばいいのか…
あの鞄を見れば私が未来人であることがバレる。
どうしたものか。
ここのトップは何を考えるどんな奴かわからない。

何時間か待っても何も誰も来ない。
喉乾いた。
部屋をうろついて机の引き出しを出したり仕舞ったりしてみる。
暇だ…あまりにも。
どうしよう…このまま寝てもいいかな……

「失礼するよ」

ノックの後、男が入ってきた。
私は部屋の角にあった机の引き出しを両手で開けているところだった。
男は額に何か付けている。
男の後ろにつっきーが控えていることから、つっきーの上司だと判断する。

「まあ座りたまえ」
「あ、はい…部屋漁っちゃってすみません」

椅子に座ると向かいに彼が座った。
つっきーがお茶とお菓子を机に置いた。

「遠慮なく食べてくれ」
「やったぁ、いただきます!」

とりあえずお茶を飲んで、お菓子に手を付ける。
みたらし団子、久しぶりに食べた。

「美味しい〜!」
「君の口に合ったようでよかった」
「みたらしの甘さが絶妙ですごく美味しい!お餅ももっちもちでずっと噛んでたい!」
「未来にもまだみたらし団子はあるらしいな」

男は私をじっと見ていた。
何か、私に持ち掛けるつもりらしい。

「そうですよ。これは昔からあんまり変わんないみたいですね」
「私は鶴見篤四郎。階級は中尉だ。君は勅使河原美優、でいいかな」
「いいですよ。それで、私に何をお望みで」
「はは、自分の立場をよくわかっているようだ」

つるみちゅが私を見ながら口角を上げる。
欲しいものは分かっている。
情報、だ。
この時代で情報というのはきっと重要な役割を果たす。
情報の重要性は私が一番よくわかっている。

「私の持つ未来の情報がお望みなんでしょう、鶴見中尉。情報を扱う仕事だったので情報の持つ力というのは理解しているつもりです」
「話が早くて助かる。とりあえず君にはここで寝泊まりしてもらう。必要があれば任務にも同行願おう」
「わかりました。あとこれはお願い、なんですが…私の望む舶来の物を取り寄せてもらうことはできますか?」
「力は尽くそう」
「ありがとうございます」

そう言うと鶴見中尉はつっきーに何か言ってから部屋を出た。
私は残りのみたらし団子を食べた。
美味しかった!
ふとつっきーを見ると彼もこちらを見ていた。

「お前交渉とか出来るんだな」
「仕事モードにしてたから!っていうか何か嫌な感じがするな、つるみちゅ…」
「つるみちゅ…?」
「あだ名あだ名。そのほうがかわいいじゃん」
「お前の考えることはわからん」

着いてこいと言われたのでつっきーに着いていく。
廊下の一番奥に小さい部屋があって、ベッドみたいなのが一つ置いてあった。
あとは申し訳程度の机と椅子があった。
ここで生活しろ、とのことだ。

「あまりうろつくなよ」
「私が大人しくしてると思う?」
「…思わないな。とにかく今日は寝ろ」

つっきーが部屋を出たので靴を脱いでベッドに潜り込む。
硬い…野宿とあんま変わんないよぉ…
ㇼパちゃん、私何とか生きて行けそうです。


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