◎1

新隆に出会ったのはもう10年程前。
私が高校に入った時だった。
超能力の学生を狙う事件があって、高校生になった私は一人暮らしを始めた。
一人は寂しかったけれど、誰かが犠牲になるよりはよかった。
この力を億劫だと思ったこともあったけれど仕方のないことだと私は分かっていた。
簡素な部屋で一人で過ごして一人で寝ていた。


新隆は校内で少し有名だった。
彼に告白する女子が絶えなかったらしい。
私の友達も何人か告白しているようだった。
恋愛事情に疎い私の耳にも新隆の名前は入って来た。

「そんなにその先輩はいい人なの?」
「うーん、そういう訳じゃないけど…何か惹かれるものがあるっていうか…」
「そうなんだ」
「振られたけど何か憎めないというか…先輩からにじみ出るなにかがいいのかも」

難しいね。
そう言うことしかできなかった。
その時私はまだ新隆に出会っていなかった。
そして超能力者拉致のリスクに晒されていた。

「今度紫も話してみたら?」

友達はそう言っていたけど、私はその気になれなかった。
恋愛など私はしてはいけないと思っていた。
もうこれ以上大切な人を作りたくなかった。


mae tsugi

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