◎3

今日は散々な日かもしれないと、その時私は思っていた。
私を誘拐しようとする奴が目の前で超能力を揮おうとしていた。
今日は放課後に渚と買い物をして楽しかったというのに。

「超能力者のガキだな?」
「違いますよ。人違いじゃないですか」
「…白を切るんじゃねえ!!」

相手はそこらへんのある物を私の方に飛ばしながら、超能力で固めた拳で殴ろうとしてくる。
私はバリアを張ってそれらを防ぐ。
何重にもバリアを張っているから相手が私に触れることすら出来ない。

「こんの…クソガキが…!!」
「そのクソガキに触れもできないくせに」

軽く挑発してやると相手はムキになる。
そうして心の余裕が無くなったところに、そこらへんに落ちていた固めの物で後頭部を殴る。
注意散漫になっている相手はそんなバカみたいな攻撃で脆くも崩れていく。

「クソっ…!」

その後も何度か攻撃を受けたけれども私がそいつに触れられることはなかった。
防御に徹していたため相手は何の傷も負っていないが、相手の顔に疲労の色が見えたことは確かだった。

「覚えとけよ!!!」

そう捨て台詞を吐いて相手は立ち去った。
馬鹿みたいだ。
超能力者を攫って何をするつもりなんだろう。
私はそれなりに暮らしていければいいのに。
世界征服?
そんなものには興味がない。
それにしても眠いなぁ。
高校に入ってから襲撃されたのは初めてだ。
欠伸がとまらない。


「…君……超能力者なのか…?」

後ろから声を掛けられた。
振り向くと、見たことのあるような顔をした男がいた。
そいつは私に近付いてくる。
私は特に逃げることもせずそれを見ていた。

「…まあそうですけど…」
「凄いな!俺超能力者に会うの初めてなんだ」
「はあ…」
「しかもその制服、俺と同じ学校じゃないか!しかも前に会った一年生たちの中にいたような気もする…」
「そうですか…私が超能力者だって言いふらすのはやめてくださいね秘密にしてるんで」
「君の秘密はこの霊幻新隆に任せておけ!」

こうして私は新隆と出会うことになった。
その時頭の中は睡眠欲で満たされていた。
にこやかに笑う目の前の男が邪魔で仕方なかった。



mae tsugi

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