◎4

「俺は霊幻新隆だ」
「私は春夏秋冬紫です」

私と彼は近くのファミレスでご飯を食べることになった。
彼が奢ると言うので私はアホみたいに彼に着いて行った。
私の大好きなハンバーグが目の前で煙を上げていた。
それにしても眠い。
私の中で食欲と睡眠欲が争っていた。

「紫って呼んでもいいか?」
「はぁ、構いませんよ」

ハンバーグを口に入れるとデミグラスソースが口に広がった。
美味しい〜〜っ!
眠いけど、凄い眠いけど美味しい!
私は黙々とハンバーグを食べた。
美味しいものには目が無い私だ…。
そんな私を彼はじっと見ていた。
何見てるんだと視線を送ると彼は口を開いた。

「美味しそうに食べるんだな」
「は?」
「美味しいものを美味しそうに食べる紫の顔、好きだな」

顔が一気に赤くなるのがわかった。
こんなことを言われるなんて初めてだった。
中学で恋愛をしたことはあった。
けれども、こんな、こんなのは初めてだった。
だからこの人は好かれるのか。
霊幻新隆には悪気がない。
それが分かるから惹かれるんだ。

「そういうこと誰にでも言うんでしょう?先輩は」
「そんなことない。俺は素直に思ったことを言っただけだ」

この人は、なんでそんなことを素直に言えるんだろう。
これがこの人の魅力なんだ、きっと。
私を見て目を細める彼を、私は直視することが出来なかった。




mae tsugi

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