◎6

朝霊幻先輩に声かけられたところを友達に見られていたらしい。
教室に入ると友達が私に駆け寄った。

「紫!いつの間に霊幻先輩と仲良くなったの?!」
「あー…昨日いろいろあって」
「いろいろって何ー!気になる〜!」

そんなこと素直に言える訳がないだろう。
私は騒ぐ友人を横目に席についた。
授業の準備をしていたら、渚がニヤニヤしながら机の横に立った。

「意外だね、あんたがあの人に気があったなんて」
「ちょっと晩御飯奢ってもらっただけ。みんなが想像してる関係とは違う」
「そう。まああんたの気が向いたら私にも話してよ」

そう言うと渚はヒラヒラと手を振って戻っていった。
渚は優しい。
私が何か隠していることを知っていて、それでもそれを追究することがなかった。
私はその優しさを甘んじて受けていた。

私は授業はきちんと受ける学生だった。
せめて勉強して、社会的な地位を築き上げたかった。
超能力が無くても、私は私なんだという証明をしたかった。


「紫〜いるか〜?」

昼休み、そいつは唐突に来た。
霊幻先輩が私の教室にやってきた。
教室がざわざわと騒がしくなる。
私は渚と弁当を食べようと、今まさに弁当を広げようとしていた。

「霊幻先輩紫に会いに来たんですか?!」
「あいつとは友達だから飯でも一緒に食おうかと思ってな」
「いつの間にそんなに仲良くなったんですか〜?」

何故彼はあんなに行動派なのだろうか。
私なら絶対に無理、出来ない。
先輩は友達らの質問をのらりくらりと躱していた。

「行かなくていいの?」
「行かなくていい。私はあんたと食べる」

そう言うと渚は少し嬉しそうにふっと笑った。

「あんたのそういう所、好きよ」
「知ってる」

結局霊幻先輩が友達たちと食べているのを私はただ聞いていた。
弁当に入っていたレンチンしたハンバーグを食べた。
美味しかった。




mae tsugi

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