◎7
「今日家来る?」
付き合って数か月経って、紫はだんだんと色んなことに慣れて行った。
手を繋ぐことにも慣れ、一緒に帰る時は手を繋いで帰っていた。
そうして紫の家の前で別れる時に軽くキスをする。
それが俺達の日常だった。
そんな中この爆弾発言である。
つまり、家に行っていいということは…俺達も大人の階段を上るということか?
「え、い、いいのか…?」
「ご飯でも作ろうかと思って」
「あ、あ〜そっちね…わかった。行こう」
「…?」
「いや、紫は知らなくていいんだ。うん。そうだな」
紫は初心だった。
なんだか俺が紫を汚してしまいそうな予感がした。
紫の家は女の子の割には質素で、整理整頓されていた。
一緒にゲーセンで取ったぬいぐるみが飾られていて、俺はかなり嬉しかった。
ソファーに座って紫が料理している姿を見ていた。
夫婦みたいだな、とふと思って俺は何だか恥ずかしくなった。
「ハンバーグ作った!」
「おお、流石…」
何となく予想はしていたがやはりハンバーグだった。
紫作のハンバーグは結構おいしくて、俺はまた紫の新しい一面を知れて心を躍らせるのだった。
紫は食器やらフライパンやらを片付けて、俺の隣に座った。
それがまた俺の奥さんみたいで、俺は少しむず痒くなった。
「ありがとな」
「礼には及びませんよ」
二人して並んでテレビを見ていた。
愛する彼女と二人で密室にいる。
この状況に耐えられる男がいるのなら俺は知りたい。
「キスしていいか?」
「は?え、まあいいけど」
紫の手を握ってキスをした。
そのまま舌を入れると紫はパニックになったのか驚いたのか、超能力が発動して部屋の物が浮き上がった。
「うわ!ごめん!」
「……そんなに謝るぐらいならしないでよ」
浮き上がった物たちは元に戻って、俺達は何となく黙った。
部屋にはテレビの音だけが虚しく響いていた。
「…何か言いたそうだけど」
紫が赤い顔をしながら言った。
多分、紫も俺の気持ちを知っているんだ。
恥ずかしさと責任感が俺を押しつぶそうとした。
「紫と、セックスしたい」
紫の肩を抱き寄せてそう言うと、紫は小さく頷いた。
頭を撫でてやると、紫は俺の背中に手を回して俺を抱きしめた。
そしてその顔を俺の腹に埋めた。
「や、優しくして」
顔は見えなかったけれど想像することはできた。
どうして知れば知るほど愛おしく感じてしまうのだろう。
いつからこんなに好きになっていたんだ、俺は。
紫のいない生活が考えられない程に、俺は紫に溺れていた。
mae tsugi
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