◎1

筋トレを終えて僕が帰路につこうとしていると、春夏秋冬先生に出会った。
最近先生は長かった髪をバッサリと切った。
先生が髪を切ったというニュースは塩中を大いに賑わせた。
もしかしたら師匠との再会が原因なのかもしれない。
肩辺りまでしかなくなった春夏秋冬先生の髪が少し寂しそうに風に揺れていた。
僕に気付いた先生が僕の所へ駆け寄って来た。
先生も仕事終わりで帰るところみたいだ。

「春夏秋冬先生…」
「影山君、肉体改造部で頑張ってるみたいだね」
「はい。僕なんてまだまだですけど…」

春夏秋冬先生はにこりと笑った。

「自分を変えようとする努力が大切だと思うよ。自分を変えられなくても、努力してきたことがいつか自分の自信に変わっていくと私は思ってる」
「…先生……」

先生の言葉を聞いて僕は何故だか安心した。
先生と他愛もない話をするのは楽しかった。
なんだか先生の違う一面を覗いたような気がした。

「紫」

校門を出てしばらくした所に師匠がいた。
春夏秋冬先生はスッと目を細めて師匠を無視してそのまま歩いて行った。
僕は取りあえず春夏秋冬先生の後に続いた。

「影山君。不審者に着いて行ったらだめだよ」
「俺は不審者じゃねーよ!」
「私のことを待ち伏せするような奴のどこが不審者じゃないの」
「うっ…それはだな…ってかお前ホント口達者になったな」
「うるさいな」

春夏秋冬先生は少し顔をしかめた。
春夏秋冬がこんな珍しい顔を見せられる程に、春夏秋冬先生と師匠は仲がいいんだろう。

「モブは早く帰れ。俺は紫を誘いに来たんだからな」
「あ、はい…じゃあまた明日、先生」
「……また明日ね、影山君」

僕はそうしてこの二人を置いて帰路についた。
ふと後ろを振り返ってみると、春夏秋冬先生の手を握った師匠が春夏秋冬先生に殴られていた。
勿論グーで。
僕はそれを見て少し笑った。



mae tsugi

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