◎4

ハンバーグを食べる紫は昔のような破顔ではなかった。
紫だってもう大人だ。
今まで生きてきて、こいつはもう十分強くなったんだ。
それに俺だけに見せてくれる顔はもうないのかもしれない。

「変わったな」
「何が?」
「いや、なんでもない」

俺達の距離をどうしても感じてしまう。
離れて過ごした10年間という月日はあまりにも長い。
この10年間、紫がどう過ごしてきたのかすら俺は知らない。
家族とはどうなったのか、そんなことすら俺は分からない。

「美味しいか?」
「美味しいよ」

紫はぎゅっと口を結んだ。
そうしてまた黙々と食べ始めた。
紫と一緒に過ごして、空いてしまった10年間という月日を埋めたい。
焦ったって仕方ない。
そんなことは分かっているはずなのに、このもどかしい気持ちが俺の身体を這いずり回る。
俺達が過ごした時期なんてもんは1年足らずだ。
それでも何故かあの1年間を忘れることが出来ない。
俺は昔も今も紫に縛られたままだ。
気付けば紫は食べ終わっていて、空になった皿をぼうっと見ている俺を見ていた。

「なに?」
「…何でもない」

紫は札を二枚置いて席を立った。
紫の後姿はやっぱ少し遠く感じた。




mae tsugi

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