◎5
新隆はきっと私より苦しい生活をしている。
だから力になってあげたいと思うけれど、どうすればいいのかよく分からない。
私は昔から不器用だ。
そもそも何で私は新隆の力になりたいとか思ってるんだ。
変わったと言われた時、少しショックだった。
確かに私は強くなった。
それでも新隆に変わったと言われて少し悲しいと感じた。
何故かはわからない。
それでもどうしようもなく悲しかったのだ。
「春夏秋冬先生」
「あ、…四月一日先生」
「今からお帰りですか?」
「ああ、まあそうですね」
私と同じ時期にこの学校に赴任した四月一日先生が私に声を掛けてきた。
彼は好青年で新隆とはタイプが違う男の人だ。
髪は黒くて笑顔は爽やかで顔も整っていて、きっとみんなこういう人のことを好きになるんだろう。
四月一日先生とは同期ということもあって私は割と仲良くしていた。
一緒にご飯を食べに行ったことも何回かあった。
「今日の夜空いてますか?」
「予定はないですよ」
「美味しいフレンチのお店を見つけたので、一緒にどうでしょう」
「…じゃあ、ご一緒させていただきます」
彼は優しかった。
きっと四月一日先生は今まで巡分満帆な人生を送って来たんだろう。
大学までサッカーをしていたと以前言っていた。
友達も多くて楽しく過ごしたんだろう。
彼には裏付けされた自信があった。
「ここです」
「わぁ…オシャレですね」
「じゃあ入りましょうか」
四月一日先生はサッと私をエスコートした。
毎度こんなことをされているけどやっぱり慣れない。
恥ずかしくて下を向いた。
どうしてこんなにもレディーファーストでどこまでも紳士的なんだろうか。
「春夏秋冬さん、気に入ってもらえましたか?」
「はい。何かわざわざすいません…」
「いいんです。僕はただ春夏秋冬さんと来たかっただけなので」
サーブされたフランス料理はとても美味しくて私は感情を表に出さないように必死だった。
ワインも美味しくて大満足だ。
きっと彼はさっきトイレに立った時に会計も済ませているんだろう。
私は自分の食べたものに責任を負いたいのに四月一日先生がそれを許してくれることはない。
それに何でこんなにおしゃれな店を沢山知っているんだろう…
「また誘ってもいいですか」
「はい。喜んで」
四月一日先生は嬉しそうに笑った。
私は彼にとって一体何なんだ…?
何でこんな時にあいつのことが脳裏に浮かぶんだ。
それに何故あのファミレスのハンバーグを恋しく感じてしまうんだろう。
私を見て優しく笑うあいつの顔が瞼から消えない。
mae tsugi
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