◎4

「おい」

声をかけても紫は俯いたままだ。
寝てるのか?
しゃがみ込んで顔を覗いたがよく見えない。
頬に手を添えて紫の顔を上げると、紫は泣いていた。
ボロボロとその目から大粒の涙を流していた。
その涙が街中の光を反射してキラキラと光った。

「…新隆…?何でここに…」
「渚に頼まれたんだよ」
「…やられた……」

紫は目を擦ろうとしていたからそれの手を掴んだ。
ティッシュで涙を拭いてやっても、次から次へと涙が零れ落ちてくる。

「どうしたんだ?」
「…何でもない」
「何でもないのに泣く訳ないだろ」
「だって、新隆が優しいから」

紫は泣きながら言った。
俺が優しいから、だって。
俺がお前には優しいなんて当たり前だろ。
だってお前が好きだから。

「…何言ってんだろ、全然カッコ付かない…」

紫はそう言ってまた泣いた。
20も過ぎた大人が人目も憚らずにただただ泣いていた。
10年前、俺が告白した時も紫は泣いていた。
夕日を反射して赤く輝く涙を俺は忘れられない。
カッコ付けなくていい。
俺は泣き虫で不器用なお前がいいんだ。

「紫の家まで送ってく」
「…近いから歩く」
「おう。じゃあ行くか」

鼻水を啜って、紫は立ち上がった。
手を握ってやると紫がふにゃりと笑うから俺も笑った。
掌から伝わる熱を感じて、俺はまた紫を好きになる。



mae tsugi

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