◎3

とにかく体が痛くて熱くてどうしようもなかった。
苦しくて苦しくて意識が朦朧としていた。
それでも紫をちゃんと守れたか、それだけが頭を巡っていた。
敵が後ろから攻撃して来ることはわかっていた。
だからあえて、当たりに行った。
紫が助かるならそれでいいと。

うつ伏せになっていた俺は紫によって仰向けに動かされた。
超能力によって作られた俺と紫を包む空間がキラキラと輝いていた。
痛みで視界が霞んでいたから、余計にその空間は天国のように美しく見えた。
すぐにそのキラキラとしたものが大量に俺の傷口に入り込んでいくのがわかった。
段々と視界が明瞭になって、その時俺は初めて紫の顔を見ることになる。

紫はボタボタと涙を流しながら俺をただじっと見下ろしていた。
その涙が超能力を反射してダイアモンドのように見えた。
ありがとうと言うのもおかしいような気がした。
だから俺は何も言うことが出来なかった。

「ごめんね」

紫はそう言って俺に背を向けた。
傷はまだ治りきっていなくて、その背中に手を伸ばすことは出来なかった。
キラキラとしたこの空間から紫が出ていく様を、俺はただ見ていた。



mae tsugi

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