◎1
紫はとても美しくなって、俺の前に現れた。
高校を卒業してもう10年程になる。
その間に、人というのはこんなにも美しくなるのだろうか。
大人になった紫は、歩いているだけで人の目を惹く程の美人に成長していた。
まさか、こんなところで再会するとは思っていなかった。
「先輩、何か用事でもあるんですか?」
「敬語はもういい。それとその胡散臭い笑顔はやめろ」
「…わかったよ。こんな事務所まで連れてきて何の用?」
「春夏秋冬と話がしたかっただけだ」
「新隆も私のこと名前で呼んだらどう?昔みたいにさ」
紫がニヒルに笑うので、俺は思わず目を逸らした。
事務所の空気はこれでもかと言うほどに流れて行かない。
紫は頬杖をついて窓の外をぼんやりと見つめていた。
「新隆は就職したって聞いてたんだけど」
「辞めたんだよ」
「ふぅん…人生色々って訳か」
煙草を出してライターで火をつけた。
煙草の煙が俺達の間を彷徨っていた。
紫はごそごそと鞄を漁るとシガレットケースを取り出した。
「煙草吸うんだな」
「そっちこそ」
紫はシガレットケースから煙草を一本取り出した。
その動作ですら様になってやがる。
「新隆、火を貸して」
「ライターならそこに置いてあるだろ」
「あんたが今、咥えてるじゃない」
「ああ…」
ったく…今日は何て酷い日なんだ。
mae tsugi
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