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「花宮くん〜!」

駅前で由奈さんが手を振って俺を呼んでいた。
由奈さんはいつもパンツを履いているのに、今日は珍しくスカートを履いていた。
というかスカート履いてるの初めて見た。

「大声出すなよ」
「嬉しくて…ホントに来てくれるとは思わなかったから…」
「俺はそこまで外道じゃねぇよ」

黒いスニーカーにタイトめな黒いワンピースにカーキのMA1。
俺が言うのも変だが普通にデートに来たカップルみたいだ。
いや、俺はそんなつもりじゃない。

「変かな…」
「は?」
「凄い久しぶりにスカート履いたんだけど…」
「すげー似合ってる……とでも言うかバァカ!とっとと行くぞ」

さっそくしょんぼりした由奈さんの手を引っ張っていく。
売れなくなったゆるキャラみたいな顔してやがる。

「今吉とてっちゃんに言いつけてやる…」
「あー…悪かったって。普通にいいんじゃねえの」
「…よかった」

頭の悪いバカな女。
ホント弟にそっくりだ。



「楽しいねー!ね!」
「(疲れた…………)」

由奈さんのテンションはぶち上がってた。
一方俺は人混みも相まって疲れていた。
由奈さんは行きたい所に俺を引っ張っていくしはしゃいで危なっかしいわでガキみたいだ。
二人でベンチに座った。
ふと前を見ると由奈さんが飲みたいと言っていた名物のミルクティーが売っていた。
これ飲ませて大人しくさせよう。

「ちょっとここで待っとけ」
「…どこ行くの?」
「いいから待っとけ。どっか行くんじゃねぇぞ。知らない奴に着いて行ったりするなよ」
「わかった〜」

由奈さんはニコニコして答えた。
俺はお前のお母さんじゃねぇんだぞ。

そう考えると以前の由奈さんは相当気を張っていたんだろう。
一人で何でも出来るように頑張っていたんだろう。
…はっ、ホント馬鹿な奴だ。







「木吉じゃん。久しぶり〜〜」
「久しぶりだなァ、ははは」
「もうあれから三年?四年?」
「まだ愛想よく男誘ったりしてんの?」

下品な笑い声が聞こえると思って振り向くと由奈さんが絡まれていた。
もしかして昔由奈さんがされたことにあいつらが関わってんのか?
ミルクティーを受け取って由奈さんの元へゆっくりと近付く。

「お前のせいでオレら退学させられたんだよ」
「罪悪感とかないわけ?お前のせいなのによ」
「お人よしの由奈ちゃんなら俺達の言いたいことわかるよね?」

随分と熱心なことだ。
つまり由奈さんにした事のせいでこいつらは退学になったと。
それほどのことを由奈さんはされたということか。

「い、嫌です」

ふと男達の隙間から由奈さんが見えた。
由奈さんは下を向いて涙声になりながら、それでもはっきりと拒否の言葉を紡いだ。
昔の俺なら多分放っておいた。
そもそもこんなとこまで来ねえ。

「僕の彼女に何か用かな?」

後ろから声を掛けると男達と由奈さんが驚いた顔をした。

「は?てめえこいつの彼氏かよ」
「ああそうだよ。こんな所で人の彼女に手を出すなんていい度胸してるね」
「だったらなんだよこいつは借りるぜ?昔の借りを返してもらってないからよ」

男の一人が由奈さんの手をぐっと引っ張ったが由奈さんは硬直したように動かない。

「由奈も嫌がってるからやめてくれないかな」
「は?うるせえよてめぇには関係ねーだろ」

男のうちの一人が俺の胸倉を掴んだ。
これは相当由奈さんのことを恨んでいるようだ。
面倒だな。
由奈さんは顔を真っ青にしてガタガタと震えていた。

「うだうだうるせぇんだよ。これ以上事を大きくしたくなかったらとっとと失せろっつってんだよバァカ」

そう言ってやると男達が怯んだ。
その隙に由奈さんの手を引いてその場を去った。
握った手は冷たく、震えていた。



 

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