17



「おい」

花宮くんがそう言って私の飲みたがっていたミルクティーを差し出した。
これのために彼は私に気を遣ったんだ。
花宮くんは優しいんだね。

まさかこんな所で再会するとは思っていなかった。
こんな、一番楽しい時に限って。


昔の私は今みたいに他人を極力避けようとかしていなくて、自由で誰にでも笑っていた気がする。
でもそれがダメだったみたい。
嫌われていた女バスの先輩に嵌められて、知らない男に襲われそうになった。
未遂ではあったけれど、それは私の心を大きく壊していった。
それから一ヵ月間のことはよく覚えていない。
ぼんやりとした記憶しか残っていない。
誰かと話した思い出すらない。
バスケは辞めた。
もうバスケには関わりたくないとも思っていた。
誰とも話したくなくて、友達もほぼすべて切った。
ただ今吉だけとは仲良くしていていた。
彼は私の心の拠り所だった。

大学に入ってバスケをまたやろうと思えたのも今吉のおかげだった。
由奈はバスケが嫌いなん?と聞かれて嫌いだと答えられなかった。
バスケには嫌な記憶が結びついている。
だけど多分このままじゃいけないんだろうなとは思っていた。
私は今吉と同じサークルに入ってバスケをやり始めた。
何かあったらワシが守ったると、そう言われて私は嬉しくて笑った。


花宮くんは今吉のことを毛嫌いしていた。
多分、これは勘だけれど同族嫌悪だ。
花宮くんは私に近付いて来た。
今吉の弱みでも握りたいんだろうなと私はぼんやりと理解していた。
私と仲良くなったところで何のメリットもない。
それに第一、私とは仲良くできないよ。


私が泣いた日、てっちゃんが花宮くんについて教えてくれた。
猫を被っていること、非常に頭がいいこと、甘いものが嫌いなこと。
てっちゃんの膝を壊したこと。
正直そんな人と友達になるとか無理だと思った。
今の花宮くんはそんなラフプレーをしたり人に怪我をさせていはいないけどさ…
けどてっちゃんは花宮くんと仲良くしてみたらいいかもしれないって言った。
花宮くんが大丈夫になったら他の男全員大丈夫になれるって。
そうてっちゃんが言ったから信じてみることにした


素で接する花宮くんは優しかった。
抜けてる私を見捨てずにいた。
今吉とてっちゃんの監視の目があるからかもしれないけど。
花宮くんは冷静で、私をそれとなく男の人から守ってくれていた。
学食で声を掛けられたとき、サークルで仲良くない人に絡まれた時。
花宮くんはさり気なく私がその人達と距離をおけるようにしていた。

「花宮くんは優しいね」

そう言うと花宮くんは困ったように眉を下げた。
私は今、うまく笑えているかな。




 

ALICE+