由奈が男子の中でも話題になったのはいつからだったんだろうか。
由奈は誰にでも優しかったから勘違いする男でもいたんだろう。
それに由奈は可愛い顔立ちをしていた。
男子に人気が出るのも頷ける。
今吉はあいつと仲良くて羨ましいだとか付き合ってんのかだとか聞かれることも少なくなかった。
だからきっとその分女子の反感を買っていたんだろうと今になって思う。

「昨日てっちゃんと遊園地行ったんだ〜」
「そりゃよかったなぁ」
「凄い楽しかった〜!これお土産。あげる〜」

由奈はキャラクターがプリントされた飴の入った小さな缶を渡してきた。
変にストラップとかじゃないところが由奈らしいと思うのだ。
ありがとうと伝えると由奈はまたヘラヘラと笑う。

いつからか由奈が隣にいることが当たり前になっていた。
この妙に居心地のいい場所を知っているのは自分だけでいい。
もう少し待ってから、由奈を自分だけのものにしてしまおう。
もう少し、嫌がらせが進んでから。


「由奈、部活行くで」
「今日日直だから仕事してから行く〜」
「じゃあ先行っとくわぁ」
「頑張ってねー」

由奈はひらひらと手を振っていた。
それに軽く答えて教室を後にした。
それが高校時代に教室で見た由奈の最後の笑顔だった。



 

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