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「由奈」

WCの会場を出ると、由奈が自販機横のベンチに座っていた。
後ろから声を掛けると由奈はゆっくりと振り向いた。
その目にもう涙はなくて、鼻が少し赤くなっていた。

「おつかれ」
「ん、おおきに」

周りにはちらほらと帰る人がいた。
その中で由奈と自分だけが二人ぼっちだった。

「もう一回だけ今吉がバスケしてるのが見たくなったんだ」
「…」
「やっぱカッコよかったなぁ…」

由奈は少し眉を下げて笑った。
その顔を見ていると何故だか無性に泣きたくなった。

「これ!お疲れ様のケーキ」
「おん…何でケーキなんや…」
「疲れた後はやっぱ糖分かなって」

そう言って由奈は可愛くラッピングされた袋を取り出した。
今度はパウンドケーキか。

「今吉、いいことを教えてあげよう」
「ん?」
「今なら私の肩が使いたい放題だ!」

由奈がドヤ顔で行ってきたから少し笑った。
これが由奈なりの慰めなんだろう。
変に気ぃ遣いやがって、アホ。

桐皇に入学した時。
バスケ部に入部した時。
初めて由奈と出会った日。
初めて試合に出た日。
由奈が強姦未遂に合った日。
インターハイで準優勝した日。
最後のWCで負けた日。

これまでの全てが体の底から沸き上がった。

「ほな由奈の肩使わしてもらおかなぁ」
「うん」

由奈の肩に顔を埋めるともう一度涙が出た。
ゆっくりと由奈は頭を撫でてきた。
その手から伝わる熱と優しさに、もう一度だけ泣いた。



 

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