期末テストも全て満点を取れたので、お母さんに色んなものを買ってもらった。
下着から洋服、靴にアクセサリーにコスメまで私が欲しいものは大体揃えることが出来た。
ただ、洋服だけは苦労した。
私が好きなブランドは中一の私には大きすぎたのだ。
だからそれっぽい服を探すのに非常に苦労した…

今日からは合宿が始まる。
袖がシースルーになっているオフショルに黒いタイトスカート、歩きやすい黒いパンプスを履いた。
日焼けはしたくはないが出来るだけオシャレはしたかった結果この服を選んだ。
私は美人ではないし可愛くもないことを十二分にわかっている。
だからスキンケアやヘアケア、洋服のセンスだけは磨いて来た。
それが二度目の人生で生かされるとは思ってはいなかった。
学校につくと知らない人達の中に目立つ髪色の人たちがいた。
青に緑に紫に灰色に桃色。
それに赤色もいた。
私がこの中で知っているのは赤司君だけなので取りあえず彼に声をかけた。

「おはよう」
「おはよう。一緒に行く一年生を紹介しておこう」
「ありがとう」

青峰君、緑間君、紫原君、灰崎君、桃井さん。
みんな髪色に名字がリンクしているから覚えやすかった。
こちらも自己紹介をするとよろしく、と言われた。

「よろしくね!今回の合宿、私と澪梨ちゃんしか女子いないから頑張ろうね!」
「…そうなんだ。よろしくね」

そんな話は聞いてなかったが、まあ大丈夫だろう。
他のマネージャーもいるとは思っていたから少しは驚いたけれど。
桃井さんからさつきって呼んでと言われたので遠慮なくそう呼ぶことにした。
さつきはキラキラしていて、いかにも女子中学生という感じだった。
いや、落ち着きすぎている私の方がおかしいのだ。

それからバスに乗って、知らない人たちの前で自己紹介をした。
私を誘導してくれた虹村先輩だけは覚えた。
他はまだ覚えられていない。
これが、アラサーの記憶力…?

私が赤司君と一番仲が良いことから赤司君の隣に座ることになった。
最初は彼と少し話をしていたが、窓の外の風景を見ているとすぐに眠くなった。
夢を見た。
私がワンナイトラブをした時の夢だ。
夢、というよりは現実だったと言った方が正しいのかもしれない。
あの時の男の顔が少し思い出せそうだった。
クソ男…会ったら絶対にぶん殴ってやるんだからな…
でもやっぱり思い出せなくて、ふと目が覚めた。

「おはよう」
「…おはよう」

カーテンが閉められていて少し薄暗かった。
他の部員たちは寝ているようで、車内はしんとしていた。

「この前菅田さんが校舎裏で女子たちに囲まれているのを見たんだ」
「見てたんだ」
「ああ。見ていたのに助けに入れず悪かった」
「赤司君が謝ることじゃないよ。私が被害を受けた訳じゃないし」

赤司君が見ていたのには気付かなかった。
でも本当に赤司君は謝る必要がない。
彼は何も悪いことをしていないのだから。

「私が気にしてないんだから赤司君が気にする必要はないよ」
「そうか」
「うん。それより私はマネージャーがさつき以外いないことを伝えられていなかったことの方が気になる」
「ああ、伝える必要がないと思ったからな」
「まあそうだけどさ」

そう言うと赤司君は少し笑った。
会話が途切れて、バスには再び静寂が戻った。

「菅田さんは面白いな」
「言われたことないよ」
「少なくとも俺はそう感じている」
「過大評価だよ」

カーテンを少し捲って外を見ると強い日差しが差していた。
露出していた肩が少しだけ熱くなった。






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