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冬休みになっても部活は続いていた。
私はさつきに簡単なデータのとり方を教えてもらって何とか一人でも出来るようになってきていた。
さつきもたまに任されるぐらいだから、私はその補欠みたいなものになった。
そして今度どこかの学校の試合に一人で潜りこむことが決まった。
普通に緊張する…

データを取ることになって、バスケのルールをちょっとだけ覚えた。
今までのマネージャーの仕事が終わったら、バスケの本を読んだり二軍と三軍の練習を見に行ったりした。
二軍と三軍のマネージャーさんとは仲良くなったので、勝手に練習を見に行っても受け入れてもらえるようになった。
黒子君が元気にバスケをしている姿を見て癒されたりしてた。
たまに吐いてたけど。
黒子君にちょっとした差し入れをしたら、近いうちに私をビックリさせると言われたので楽しみにして待ちたい。
差し入れといってもレモンのはちみつ漬けなのだが、喜んでくれていて嬉しかった。

「おい菅田!何でテツにだけ差し入れしてんだよ!」
「アホ峰君…一軍の休憩はまだのはずだけど…」
「事実だけどその呼び方やめろ!菅田がどっか行くの見えたから抜け出してきたんだよ」
「何してるんですか青峰君…さっさと戻って下さい」
「あれ、二人とも仲いいんだ」

こんな正反対の二人が仲いいだなんて意外だ。
まあでも正反対だからこそ惹かれる所があったのかもしれないな。
黒子君がわかりやすく二人が仲良くなった経緯を教えてくれた。
バスケを通じて仲良くなるなんて、凄い青春じゃないか…

「差し入れありがとうございました。青峰君が凄い欲しそうな顔してるので残りはあげてください」
「え?!いいのかよ!」
「黒子君がいいならあげるよ」

青峰君が凄い嬉しそうな顔をしたのだが、マネージャーとしてここで甘やかす訳にはいかないのだ。
青峰君が受け取ろうとしたタッパーをサッと奪い取った。

「おい菅田!何すんだよ!」
「青峰君、練習に戻ろう」
「は?」
「早くしないと虹村先輩に怒られるよ」
「うわ、やべぇ」

青峰君が黒い顔を青くしたのを見て黒子君が笑ってた。
それから黒子君にさよならを言って二軍と三軍の体育館を出た。
青峰君はさっさと体育館に走り去ってしまって、私は普通において行かれた。
薄情者め!










体育館に戻ると青峰君はもう練習に参加していた。
それを見てからいつものように掃除をしたり洗濯をした。
休憩になると青峰君が駈け寄って来たので餌付けした。
美味しそうな顔をして食べてくれるので、こちらも悪い気はしないのだ。

「何食ってんだ?」
「レモンのはちみつ漬けっす」
「菅田が作ったのか?」
「はい。少しだけですが」

虹村先輩がアヒル口のままこちらを見ていた。
本当にアヒル口が似合う男の人だなあ。

「俺にもくれよ」
「いいですよ」
「は?!これは俺のだ!」
「いいから寄越せ!」

青峰君から私のタッパーをひったくった虹村先輩がレモンを食べた。
少し汗をかいて、リストバンドで汗を拭く虹村先輩はやっぱりちょっとカッコイイ。
今の私より年上で、それでいてどことなく人を引きつれる雰囲気があった。
だからきっと彼は先輩に見えるのだろう。

「うめぇ!」
「ありがとうございます。お口に合ったようでよかったです」
「おう、ありがとな」

先輩は眩しく笑って私の頭を撫でた。
どうやら先輩は人を褒める時に頭を撫でるのが癖らしい。
そして私は人に頭を撫でられるのに弱いらしい。
恥ずかしさで頭が止まる。

「菅田って虹村先輩に可愛がられてんだな」
「え、そうなんだ…」
「気付いてなかったのか?虹村先輩合宿の時から菅田のことすげー心配してたんだぞ?」
「まあ確かに私が一軍にいるのはイレギュラーみたいなもんだからね…」

後輩だから私が一軍でうまくやれるように気を遣ってくれたんだろう。
虹村先輩は少し荒っぽいから、ちょっと意外だ。
青峰君は残りのレモンも食べ終えたみたいで、空になったタッパーを私に手渡して練習に戻った。
それからデータをまとめていたさつきの所にクッキーを持って行って一緒に食べながら作業をした。
さつきがまとめるデータを今度は一人で取りにいかなきゃいけないのだ。
頑張らなきゃな。




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