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「赤司君と喧嘩でもしたの?」

友人にそう言われたのは虹村先輩と出かけてから一週間後のことだった。
思わず弁当を食べていた箸が止まった。

「してないよ」
「そうなの?最近二人でいるところ見ないからさ」
「まあ…ちょっとね」
「色々あったんだね…でも赤司君が澪梨のこと凄い見てるから話し掛けてあげたら?」
「え、そうなんだ…」

喧嘩はしてない。
ただ一方的に、私が征十郎と顔を合わせづらいだけなのだ。
結構自分本位な発言を本人に聞かれてしまったのだから…
それにしても征十郎が私のことを見ているとはどういうことだろう。
何か連絡でもあればLIMEをしてくれればいいのに。

部活に行っても、何だか青峰君とか紫原君とかが心配そうな目で見てきた。
そんな目で見ないでくれ…

「赤ちんと喧嘩したの〜?」
「してないよ」
「前に赤ちんについて語ってるところ聞かれたから話し掛けづらいの?」
「よくわかってるじゃん…」

紫原君は案外鋭い。
ぼうっとしているようで周りのことをよく見ている子だと思う。
征十郎はさつきとメニューについて話し合っているようだ。
考えれば考える程、何故征十郎が私と仲良くしてくれているのか分からない。
勉強は、まあできる。
容姿は、平均並み。
バスケは詳しくない。

「澪梨ちんってさぁ、たまに凄い酷い顔してる時あるよ」
「急に酷いこと言われて混乱してる」
「考えすぎなんじゃないの。赤ちんだって、中学生なんだよ」
「そうだねぇ」

タオルを回収して、空になったボトルを片付けた。
洗濯機がガタガタ動いているのを見ていると色々考えてしまう。

社会に出て、社会的立場とか学歴とか家柄とかそういうのを目の当たりにしてきたからどうしても考えてしまうのだ。
征十郎は将来凄い人になるだろう。
そんな人の息抜きの場所になりたい、だなんて事を本人に聞かれるなんて。
私が勝手に思っているならそれでいいけれど、それを知られてしまったのは良くなかった。
余計なお世話をやいていることを本人に知られてしまったのだ。
しかも自分でも余計なお世話だって分かってるから猶更恥ずかしい。

まあそんなこと考えた所で過ぎたことはどうしようもないのだ。
二度目の人生なのにさっそく後悔してしまっている…

洗濯物を干して、部室の掃除に取り掛かった。
こういう作業をしている時には何も考えなくて済む。
扉が開いてさつきが部室に入ってくるのが見えた。

「澪梨〜洗濯物ありがとう!」
「ううん。気にしないで」
「澪梨、あのさ…私が言うようなことじゃないと思うんだけど…」
「うん?」
「赤司君は澪梨が思ってるよりも澪梨のこと大切に思ってると思うよ」

さつきの言葉が胸に響いた。
他人からそう言われてちょっと安心した。

「ありがとう」

泣きそうになったから笑ってさつきの前から走り去った。
ボトルを洗いながら少しだけ泣いた。
前世より人間関係について色々考えてる気がした。
そして恵まれている気がした。


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