何度寝てもこの夢が覚めることはなかった。
寧ろ自分がこっちの世界に定着しつつあるのを感じた。
適当に授業を聞きながら中学一年生で学ぶ範囲を把握した。
こんなの、常識に入るぐらい簡単だ。

「菅田さん滅茶苦茶頭よかったんスね?!」
「普通だよ」
「普通で満点は取れないっス!」
「はは、まぐれじゃないかな」

私の本来の年齢を考えれば満点を取ることなど普通のことなのだ。
先日のテストの結果が張り出されていたと黄瀬君が教えてくれた。
もし満点を取ったら私の好きなものを買ってくれるとお母さんが言っていた。
何にしてもらおう。

「澪梨ちゃんテスト凄いね!ビックリした!」
「たまたまだよ」
「えー!でも凄いよぉ!」
「ありがとう」
「そういえば澪梨ちゃんってどの部活に入る?」

最近できた女友達が私に話し掛ける。
彼女の名前は何だったっけな。
多分彼女は黄瀬君のファン。
だから黄瀬君と普通に話す私にちょっとでも近付こうとしているのだろう。
いかにもミーハーな考え方だ。

「まだ決めてないね」
「じゃあ一緒にバスケ部のマネやらない?」

マネージャーとは程遠い生活をしてきた。
そもそも自分のことすらままならない私に人の世話なんて務まるのだろうか。
まあ、でもこれは夢なのだしたまには冒険も必要だろう。

「いいよ」
「ホントぉ?!じゃあ放課後一緒に体育館行こうね!」

彼女はそう言ってから黄瀬君をちらりと見て去って行った。

「バスケ部のマネージャーやるなんて意外っス」
「たまには自分らしくないことをしてもいいかもな、と思って」

そう、二度目の人生なのだから深く考えることはない。
私はやりたいことをやるだけだ。



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