また来るから考えておいてねと言われてからはや2週間。もんもんとした日々を送っている。

付き合う、というのは好き同士が収まる関係性のことだと思う。イルミさんのことが好きか嫌いかと聞かれるとそりゃもちろん嫌いではない。あんなに色々と言われて、見た目も抜群のイルミさんにひとつも揺らがないかと言われるとそれも嘘になる。おまけに2週間も会っていないせいで、あの日のイルミさんの言葉が頭の中でリフレインしては顔を赤くする毎日だ。



「ヒソカさん…」


「なんだい名前ちゃん」

「私はどうすればいいのでしょう…」

「そうだねぇ。1回付き合ってみたら?」

「そんな簡単におっしゃいますなぁ!」

「どうして?もしかして男性と付き合うの初めて?」

「そういう訳ではないですけど…」

「へぇ!そうなんだ。興味あるなぁ、名前の昔の男」

「何ですかその言い方、やめてください」


ぐったりと机に倒れ込む私をにやにやと見下ろすヒソカさん。今はバイトの昼休憩で、丁度良く来店されたヒソカさんと相席してランチタイム中だ。


「何かトラウマでもあるのかい?」

「そんなんじゃないですけど…」




当時は誰かと付き合うということに憧れていて、告白されたことに舞い上がって何も考えずに了承した。学校帰りに二人で制服のまま遊びに行くのはどきどきしたし、クリスマスやバレンタインなどの行事を彼女という立場として迎え、色々準備をするのは純粋に楽しかった。


「へぇ、それで?」


だけど、二人っきりでそういう雰囲気になって、いざって時、やっぱりだめだったのだ。そもそも何となくキスも敬遠していた時点で薄々自分の気持ちには気づいていたけれど、ずっと引き延ばしていた。だけど、結局私はその人のことが好きではなかった。



「ふーん。まぁそういうこともあるんじゃない?」

「傷つけちゃったんです。あの時のあの人の顔、今でも忘れません」

「それでイルミへの返事も渋ってるって訳だ」


「……イルミさんを傷つけたくありません。まぁ、イルミさんが本当に私を好きなら、の話ですけど」


「イルミはああ見えて意外と感情豊かだよ。名前のことは本気だと思う」


そんなこと言われると余計に考えちゃいますよぉ〜。
再びぐったりと倒れ込んだ私の頭の上からくすくすと静かに笑う声がする。奇抜な格好の割に意外と上品な仕草をする男なのだ。よしよしと心なしか楽しげな声と共に、大きな手で頭を撫でられる。やっぱりヒソカさんは安心するお兄ちゃんのような存在だ。



そのときカランコロンと誰かの来店を告げるベルがなり、声がした訳でも足音がした訳でもないのに、ほとんど確信のような予感を持って慌てて顔を上げた。

いらっしゃいませ〜。いつもより少し高い女性店員の声。店内の女性客の雰囲気が変化する。今までだって、これくらい、いやこれ以上顔を合わせないことは良くあったのに、その顔を見ただけでとてつもなく懐かしい気持ちがこみ上げてきて、胸の奥がぎゅうっと締め付けられた。




「名前、久しぶり」



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