「ヒソカ。今名前の頭撫でてたよね。気安く触らないでくれる?」

「なんだイルミ、振られたくせに彼氏気取りかい?」

「諦めるつもりないって言ったよね」

「もう二人ともやめてください!イルミさんお久しぶりです。何か注文されますか?」


会うなりいつものトーンで言い合いを始めた二人の間に入り、イルミさんにメニューを突き出す。意外と以前と変わらない調子で接することができそうだ。


「食べながら帰ってきたから、飲み物だけでいいや」


エプロンをつけていないことで私が昼休憩を取っていることが分かったのか、インターホンで店員を呼びつけるとコーヒーとだけ素っ気なく言い捨て、こちらに向き直った。



「元気だった?」

「はい。イルミさんはお仕事忙しかったんですか?」

「忙しいっていうか、ちょっと仕事先が国外だったんだよ」

「へぇ!じゃぁ列車で帰って来られたんですか?駅弁とかおいしいですよね〜」

「あーうん、まぁそうだね」


いまいち煮え切らない返事をしたイルミさんに、隣でヒソカさんがくすくすと笑う。なんだろう?駅弁好きじゃないとか?でもそんなことイルミさんは隠しそうにないけど・・・。



「それより聞いて欲しいことがあるんだけど」

「何ですか?」

「オレ、名前の笑顔も好きだ」

「っぶふ」


思わず飲んでいたオレンジジュースを吹き出した。汚いなぁなんてイルミさんはテーブル脇のナプキンを何枚かつまんでこぼれたジュースを吹いている。


「いきなりなんですか!」

「イルミは言葉を飾らないんだよ、名前」


飾る飾らないの話じゃない!



「2週間の間、やっぱりヒソカのことは一切思い浮かばなかったけど、名前のことは毎日考えた」

「それ引っ張るね」

「ここに来て名前の笑顔見たら、帰ってきたなって安心したんだよね」

「そ、それは良かったです・・・」


「じゃぁ、名前の顔も見れたことだし、オレは帰るよ」

「え!もうですか?」

「引き留めてくれて嬉しいけど、父さんに仕事の報告しないといけないからね」

「別に引き留めた訳じゃっ」

「また明日くるよ。じゃあね」


自分の言いたいことだけ言い切って、注文したコーヒーも待たず嵐のように去って行った。分かってはいたけど、自由な人だ・・・。




「本当に名前の顔だけ見に来たって感じだね」

「・・・そういえばイルミさんって何のお仕事されてるんですかね?お父さんに報告って言ってましたけど・・・」

「家族でやってるんだよ」

「自営業ですか?」

「そんなものかな。まぁ詳しくは本人に聞くといいよ」


注文主のいないコーヒーはヒソカさんが飲みきり、代金まで支払っていってくれた。
やっぱりヒソカさんは頼りになるしっかりしたお兄ちゃんである。




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