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「え、江口さん、!」
玄関でスニーカーに足を引っ掛けていると、バタバタと勢いよくドアを開けてでてきた瑞希のあまりに悲痛な叫びに引き止められる。突然のことに驚きすぎて、靴紐を結ぶ手が止まる。
「ずっと、ずっと一緒にいます、だから、ひとりで頑張りすぎないで」
背中にトンと軽い衝撃があり、やっとの思いで振り返り彼女の頭を二、三度撫でると彼女もまた首を少し振り俺のパーカーに柔らかい髪を擦り付けた。
「瑞希?どうしたの、」
「お願いです、いなくならないで、、」
はじめはなにかの舞台の練習でも始まったのかとおもった。エチュード的な?料理しながらセリフ唱えてることもあったし。
それにしては切実すぎる声色に事の重大さと、なにかを勘違いしているんだろうと仮説を立てる。
「いなくならないでって、怖い夢でもみたわけ?コンビニ行こうとおもっただけなんだけど」
「へ、?」
「今日はオフ。さては昨日ちゃんと聞いてなかったな?」
その場にへたり込んだ彼女の顔を覗き込むと、かわいいくらいに呆然としていて思わず吹き出してしまった。
「コンビニで甘いものでも買ってくるから。今日はゆっくり一緒に過ごそう。な?」
パジャマのままの彼女はゆっくりと頷く。
ポンポン、と頭を撫でてからいってきますのキスをおでこに落とした。
瑞希は外で強がっている分、ふとしたときに脆い。というのは、そうであってほしいと思う自分のエゴなのかもしれない。
彼女が自分に依存してくれる理由がほしいだけなのかもしれない。
そうでもしないと彼女は俺がいないところでも十分生きていけてしまうから。そう思うと時々少しだけ怖くなる。
ここのところ立て込んでいた仕事量に、瑞希がすごく心配していてくれたことはよく知ってる。身体が資本だからと彼女だって忙しいのに温かいご飯を作って待っていてくれたり、振り入れの練習に付き合ってくれたり。
それはもう、感謝しきれないくらい。今までもこんな多忙さは何度か経験していたが、改めて結婚っていいなって思ったのだ。
手放したくない。
でも瑞希は。そこまで考えて早朝の澄んだ空気にため息をはいた。