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「あのさ!」

自分でもびっくりするくらい大きな声だった。
艶のある髪が揺れる。
ゆっくり振り返った彼女とお互い目を丸くしたまま見つめ合う。見つめ合えば、素直におしゃべりできない、なんて上手いこと言うもんだと思っていたけどまさにそれ。喉の奥が乾く。

「あのさ、このあと、空いてる?」
「、次の収録あるんで、2時間くらいなら、」
「っフラペチーノ!フラペチーノ飲みにいかない?新商品昨日でて!」
「いいですよ」

なんだ、スタバなんかよくいくじゃないですか、なんて眉を下げる彼女。

「あの、腕、」

思わずつよく握ってしまった腕をパッと離す。彼女の細い手首がちょっぴり赤くなっていて焦る。

「あっ、ごめん手汗すごいよね、ごめん」

「増田くん、わかりやすいですよね」
「わかりやすい下心でごめん」

「わたわたしてる増田くん、面白いなって思ってるんで大丈夫です」
「かっこわるくない?!それ」
「いや」
「くっそー、悔しい」

でもそれで、彼女のポーカーフェイスを崩せるなら、それはそれで役得だなって。思ってしまうことを許してほしい。彼女の隣をキープすることに今は必死なんだ。少々かっこ悪くてもそれだけは譲れない。譲れない闘いの最中。


「今度、新しく見つけたカフェ教えますね。明日の収録スタジオの近くなんです」
「よし。じゃあ明日、明日の収録前に行こう。一緒に行こう。」
「増田くんなら絶対そう言うとおもった」


年下の彼女のほうから、行きますよって手を差し出してくれる。差し出された手を握り返すだけでドキドキする。

まだ動き出したばかりの恋は、小悪魔のような彼女に掻き回されてばかり。でも、それでも名前ちゃんは俺の隣を拒まないから、下心とわかっていても隣にいてくれるから、脈ありだって信じて、今日も強引な約束をふたりの未来にねじ込んだ。