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「同棲はじめてよかったこと?」

手元のグラスのマドラー弄んでから少しだけ考えるそぶりを見せる。

薄暗い店内。強めのウイスキーが沁みる夜。
今日は江口さんが帰ってこないから帰りたくないという親友。2人きりは実は久しぶりだったりする。


「ストーカーの嫌がらせが減ったかなあ。まあそれがなきゃ事務所も同棲とか恋愛とか許してくれてないと思うけどね。」

「追い詰められてたもんね」

「そう?」

「そりゃあもうひどかったよ。ほかは?」

「忙しくても毎日会えるとかちゃんとごはんたべてるなって安心できるとことか」

決して言葉は多くない。
甘ったるい言葉もない。

でも江口さんの話をするときはすこしだけ優しい顔をする。
柔らかい声をする。

「帰りがけにさ、コンビニ弁当買って、レジであっためてもらって、それが冷めないようにってちょっと早足で帰って2人でお家で食べるの、幸せだなっておもうよ」

内容はぶっちゃけどうでもいい。
彼女が穏やかに過ごせていることがわかれば、それでいい。

「ずっとさ。心配だったんだよ。生き急いでる感じがして。ちゃんと、人間っぽいよ」



「結婚したら仕事辞めたいな」

山口百恵みたいに綺麗に舞台から去りたい。
そうグラスを傾ける彼女の横顔は、普通の女の子の顔だった。