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「やっばい、待って、まだ!」
カーテンコール。
あと1分で衣装を変えてステージに登る。
スタッフ二人掛かりで早着替えに取り掛かる彼女を横目に自分も着替えを済ませる。
カーテンコールだけのためにこの純白の衣装が用意されているのは、やっぱり勿体無いとおもうくらいに細部まで凝ったもの。エンディングでハッピーな結婚式を挙げるのは原作を忠実に再現した演出。公私混同なんて良くないってずっと思って今日までやってきたけど、やっぱり重ねてしまうのを、どうか赦してほしい。
衣装合わせ当初から続く、コルセットを締め上げるときのやりとりはもうこれで10回くらいは聞いてるんじゃないだろうか。
舞台では、アンサンブルのキャストから順に拍手を浴びている。
彼女の着替えが完了するまでの、ほんの数十秒、それがとても長く感じる。
「細貝さん、お待たせしました」
衣装さんの声に振り返る。
「どうかしました?」
「いや、」
綺麗だ。
零れ落ちそうな言葉を飲み込んで、平静を装って左手を差し出す。
彼女が重ねた右手をそっと握り返してから、薬指に指輪があることに気づく。
昨日まで、というかさっきまでこんなんつけていたっけ、とまじまじと見つめてハッとする。衣装さんが用意してくれたものなんかじゃなくて、正真正銘、自分が贈った婚約指輪だ。
「最後だし、いいかなって思って」
すこし照れたように彼女は顔を逸らす。
「行こう」
盛大な拍手と、眩しい照明。座組の仲間たちでさえも嬉しそうに笑って拍手をして迎えてくれる。赤い絨毯の上を彼女の手を引いて一歩ずつ進む。
俺たちは明日、夫婦になるんだ。