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「深夜でもなんでもいいんで仕事終わったら絶対来てください、タクシー捕まえて!」
「江口先輩のこと頼れる先輩だって思ってるんで!!」

スタジオを出てスマホを開くとおびただしい通知の量に引いた。全部花江くんと壮馬だ。酔ってる。
そういえばSolidSのメンバーで壮馬の家で宅飲みをするって言ってたな。当の俺は急遽仕事が入って泣く泣くキャンセルしたんだった。ごめんな、シキ。仮にもリーダーなのに。
それにしても壮馬の必死なメッセージはなんなんだろうか。酔いすぎだろ。思ったより早く終わったし、とりあえず駅前でタクシーを捕まえて壮馬のマンションの住所を伝えた。

「江口さん、すんません、まじ」
インターホンを鳴らせば出てきたのは梅原だった。しれっとしてるがこいつも相当飲んでそうだなあ。ひとり素面なだけに、この先の展開を予想してげんなりする。花江くんのスニーカーの隣に綺麗に並べられている女物の靴は瑞希ちゃんのだろう。珍しいな、こんな高いヒール。

「久保」
「はい?」
「久保瑞希、送ってってほしいんすけど、」
「え、ちょっとまって花江くんじゃなくて?」
「久保っす」
「あ〜〜江口さん!最高!さすが江口パイセン!頼れる江口パイセン!」

梅原がリビングを開けるとビールを手にした花江くんと壮馬が飛びついてきた。




「久保のマネージャーが突然男の人に変わったじゃないですか。やっぱりアレでした」
「アレ?」

ふ、し、ん、しゃ

梅原は酔いが醒めたらしい。タクシーのところまで彼女の靴と荷物を抱えて見送りにでてきてくれた。今日は一応その愚痴会も兼ねてたんですけど、久保が珍しく早々に潰れちゃって、逆にこっちが焦るっていう役不足っぷりだったんです。ふにゃりと眉を下げた梅原。珍しいな、としか返せなかった。

冷え込んだ夜風を気にして彼女に着ていたパーカーを着せておいてよかった。念には念をとフードを被せてあげた。

「お前が送ればよかったんじゃ?全然酔ってないじゃん」
「俺、そういうの向いてないんで」

小さく頭を下げた梅原を横目にタクシーのドアが閉まる。

グレーのピンヒール、分厚い台本が5冊も入ったトートバック、赤いリボンがかけられた紙袋。
中を覗き込めばハッピーバースデーと綴られたカードと包みが解かれたギフトボックス。このセンスの良さは梅原チョイスかな。

ああ、そうか。腕時計に目をやると日付はとっくに変わっていた。
だから断りの連絡をした時、壮馬が珍しく駄々をこねたのか。

「起きた時江口さんだったら安心すると思うんです。だから、お願いします」

最後に梅原が零した言葉の真意はどこにあるのか。左側に温もりを感じる。すやすやと寝息を立てる彼女はどんな夢を見ているのだろうか。窓ガラスにもたれ、流れるネオン街を眺めながら考えた。

少し開けた窓から入ってきた風は秋そのものだった。