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「流司くんの好きにしていいよっていったら次の日に『瑞希さんのアポ取りました!』って言われてこっちがびっくりだったよ」
「そうだったんですね。わりとノリでオッケーしちゃいました」

現場入りすると顔見知りのスタッフさんが出迎えてくれた。会釈をしてマネージャーの後ろにそっと身をひそめる。こういうときマネージャーのガタイが良くてよかったなって思う。怒られそうだから言わないけど。

流司くんがアーティストブックを出すからそれに出てほしいと連絡をくれたのは流司くん本人だった。
たまたまスケジュールに余裕があったからオッケーしたけど、わたしにとっても写真集は初めて。パンフレットとか雑誌とかはあるけどその数カットとはまた話が違う。
この仕事に事務所はやっと写真集に乗り気になってくれたと両手を上げてお祝いムードだった。たしかに興味はなかったし、自分のソロ写真集となるとまた別だけどなあ、と曖昧に笑っておいた。「写真集つき童話朗読CDのお仕事があるんだけど!」と社長がいっていたし、きっともう拒否権はない。


緊張で手のひらにしっとり汗がにじむ。

「瑞希さん!ありがとうございます!」

駆け寄ってくる流司くんに小さく手を振る。

「厳島神社公演、すごかったんだってね」
「いや〜すごかったっす!これお土産!麻璃央くんが美味しいってずっといってたんでバッチリ美味しいとおもう!」
「それは安心。ありがとう。すごいメンバーカラーみたいになってる」
「へへっそうなんだ〜これが加州ね!赤はチョコ味だから1番おいしいよ!そうだ、写真集の話したらみんな羨ましいっていってたから自慢しちゃった。やっぱり瑞希さんパワーすごいなって。」
「なんだそりゃ」
「あっ花丸もちゃんと観てるし、俺今度の瑞希さんの舞台絶対行くから」
「そっか、染谷さんにも伝えとくね」
「う〜それは緊張する、、」

普段は割とネコみたいな流司くんが犬みたいに尻尾をぶんぶん振ってあれこれ話してくれる。わたしはお土産のもみじ饅頭を口にしながらうんうんと相槌をうつのだけど、スタッフさんはそれをみて微笑ましがっていた。

撮影を終えて満足そうに笑う彼は、一丁前にアーティストって顔をしていて、はじめて舞台のワークショップで話した時よりいつのまにか大人びた横顔に、昔の自分を重ねる。

男の子はすぐ成長しちゃうな、なんて。


「ほんとにいい写真だからこれツイッターにあげてもいい?」
「うん、いいよ」

舞台に立ち始めたあの頃を思い出すようで懐かしい気持ちと、がんばらなくちゃという気持ちと。なんだか初心にかえるようだった。

近いうちにありそうな話。自分がもし写真集や、スタイルブックとかそういった類のものを出すとしたら、どうするのだろう。もし誰かを呼ぶとしたら誰を呼ぶんだろう。

ボーっとかんがえる。

そういえば江口さんも写真集出すっていっていたな。どんな気持ちなんだろう。

、、違う違う、そうじゃなくて。ふとした時に江口さんを思い浮かべてしまったことに頭を振った。