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「あっわたし終電なんでそろそろかえりますね」
缶ビールをぐいっと一気飲みした瑞希ちゃんが立ち上がる
ほろ酔い気味でふらふらとバランスを崩していて江口さんが思わず手を伸ばそうとしたけど隣にいた花江くんの方が早かった。
「え〜瑞希ちゃん帰るの?!ありえなーい!」
「帰るよ、帰るの。電車まだあるし」
「泊まれば電車は関係ないでしょ〜」
「自分の布団で寝ないとあしたがんばれない」
絶好調に酔っ払いの花江くんにベタベタ肩を組まれる瑞希ちゃん。さっきまで寝てたのにいつ起きたんだ。
心底困ったように眉を下げたのを察したのか、酔っ払いを引き剥がしながら送ってくよ、と江口さんが声をかけてくれてるのに意地っ張りだからいつものように大丈夫ですよ〜とへらりと笑っていた。ここは惚れるとこだろうにきっとこいつは覚えてないんだ。よく心折れないな、なんて。
「あ、ほんとに送ってくんだ」
扉がガチャンと音を立てて閉まるのを見届けてから梅ちゃんがボソッと呟く。
「江口パイセン本気だかんね」
ひと通り騒いだ後のテーブルの上を少しだけ片付けながら、寒空の下のふたりを思い浮かべて頭を振る。
「あれ壮馬くんも帰るんじゃ?」
「帰るよ〜、でもほら、空気読まなきゃ?ね。この酔っ払い、よろしくね」
眠そうな梅ちゃんが低い声でうわあ、と嫌がった。花江くんは人をダメにするクッションに突っ伏して再び寝息をたててる。明日起きれる気がしない、無理だ、とブツブツいいながらアラームをセットしてる梅ちゃん。
酔っ払いをふたり先輩の家に残して自分も帰り道を急ぐ。
冷ややかな風が心地よく酔いを覚ましてくれた。今頃あの人たちはなにを話しているんだろうか。明日西山とからかいたいなあ。でもきっとその前に「なんで瑞希ちゃんの前で平然とそんな下ネタ言えるのか理解できない」って真顔で言われんだろうな。それで江口さんがちょっとへこむんだ。想像しただけで笑えてきたので下を向いて深呼吸をした。