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彼女はいつだって輝いていた。
背筋がしゃんとして、無口だけどよく笑う子。いつもバカみたい真面目な子。

「ひろきくん、わたしね」
「うん」
「声優のお仕事、ちゃんとしてみようと思うんだ」

ベッドの上で膝を抱えた彼女にホットミルクが入ったマグカップを渡した。

「うん。きっとそうなんだろうなって思ってた。」
「そっか」

舞台上ではどんなアドリブも効かせられるし、詰まったセリフにフォローも出せるけど、今は次の言葉を探す瑞希の隣に座ることしかできない。舞台の上じゃなきゃ、気の利いたことひとつできないのか。

2人分の重みでベッドが軋む。


「事務所も決まったの。お世話になってる先輩が所属してるとこ。1からやろうとおもうの」

ポツリ、ポツリ。ためらいがちに言葉が紡がれる。

「舞台はわたしの居場所だったから、だから、甘えたくなっちゃうから、甘えてたらいつまでもこのままだって」

いつだって彼女はひとりで悩んでひとりで決断する。スランプに陥って苦しんでるなんて、そんなこと昔から気付いていたのに。心のどこかに距離があったことくらい、わかっていたのに。

「ひろきくんごめんね。これで最後にしたいんだ。」
「それは、瑞希が決めたこと?ちゃんと自分で考えて決めたこと?」
「うん」

「じゃあ、そのかわり、それをいちばんに応援してもいい?」




染ちゃんからも圭くんからも鬼のように電話がきた。

当たり前のように置いてあった彼女の部屋着も、化粧水も、歯ブラシも、なにもなくなったあと。彼女の香水の香りもすっかり消えてしまった。

お揃いのマグカップだけ捨てられなかったのは、いつでも戻ってきていいよって言いたかったから。
俺自身のエゴ。

言えなかったけど。



「わたしが欲しかったもの全部もってて、どんなに追いかけてもそれに追いつけなくて。それに気づいちゃって。それがすごく悔しくて。だから、負けない道を探そうと思うんです。わたしだけの魅力が欲しい。強みが欲しい。そのための挑戦、武者修行だと思ってます。わがままですよね。わたしに新しい道を、きっかけをくれてありがとう、そう伝えたいです。背中を押してくれた人のためにわたしは走り続けます。」

負けず嫌いな彼女は、雑誌の中でそう笑っていた。