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お酒を飲むペースがいつになく早い。

「浅沼さん」
「なに」
「わたし仕事したいんです」

早速ジョッキを空にした彼女はタコワサに箸を伸ばしながら言った。

「今、声優やるのがたのしくて仕方がないんです」

そういう横顔は苦しそうで、どうしたものかと思う。
良くも悪くも真っ直ぐなのだ、こいつは。楽しそうにしているが、本当は真面目で真っ直ぐにしか進めない、器用貧乏。オーディションにきたときも、共に舞台を作ったときも、声優をはじめた当時もそうだった。

「でも、最近ちょっとだけ欲があって。一緒にいたいって思う人がいたんですよ。隣にいたいって。でもわたしはそこにいれなかったんです。」

付き合ってるとかじゃ、全然ないんですけど。
うつむきながらポツポツと言葉を絞り出していく彼女に日本酒をつぐ。

「成長したんじゃん?昔はそんなの迷わず殴り捨ててこっちの世界飛び込んできてたけど、立ち止まれるようになったってことでしょ。」
「立ち止まるってしんどいんですね」

武士のように潔い彼女はなんでも割り切ってしまう。失うことに躊躇いがなかった彼女のことを少し心配していたのは事実。

「幸せそうだった?」

一瞬目を見開いて、すぐにさすが浅沼さんと眉を下げてから、「はい、すっごく」と笑った。

「お前のことだから誰にも言わないと思ってたから、おじさん嬉しいよ」

今日は黙ってお酒を飲ませてやろうと、店員を呼んだ。