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「ハッピーバレンタイン」

台本に目を落とす久保に真顔で手を差し出す
顔を上げた彼女は俺を一瞥してから手元に置いてあったポッキーの袋を開けた

「極細ポッキー1本はダメでしょ」
「シェアハピだよ」
「全然シェアされてない」


他の女性陣はバレンタインで大盛り上がりだけど、そんな輪から外れてひとりいつも通りでいるマイペースさ。



「今日見ちゃった」
「なにを?」
「江口さんと仲良くスタバから出てくるの」
「スタバくらい行くよ、現場近いし」

こんなさっむい中フラペチーノを片手に店から出てきてお互いシェアしてる姿を見て、この人たち本当に付き合ってたんだと妙な実感が湧いた。

「チョコレート渡すの?」
「うーん今日は1日ここだしあとでコンビニチョコパーティーしようかな」

興味なさそうに極細ポッキーをボリボリと食い尽くす彼女に、やっぱりイベントという文字は似合わないな、なんて。

ちょっと女の子らしくなったと思ったのに。

「おまえほんっと変わんないよな」

そう言えばハハっと笑われた。

「ヨシキが今度江口さんも交えて飲もうって」
「それはめんどくさそう」


「それはそうと、フリ教えてくんない?」
「防衛部?いいよ」


チョコレートに目もくれず部屋の隅っこでフリの確認をする俺たちに、後からやってきた先輩たちが大笑いしていた。

「江口、さっき結構な量のチョコレート持ってたぞ」

そう茶々を入れる達央さんに久保は苦笑いをしながら「チョコに合いそうなウイスキーの出番ですね」と返す。

「ハハ、正妻の余裕か?」
「だってみんなと一緒じゃつまらないじゃないですか」
「おまえちょいちょい天邪鬼だよな」

さっきまで本命から何ももらえない江口さんに同情しかけたけど、バカバカしくなって代わりに彼女の極細ポッキーを食い尽くしてやった