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「軽率に懐古厨になるんだけど」
「なに、急に」
ニーアのコンサートでシナリオの朗読を任された。相方は安心と安定の久保瑞希。相変わらず二人でやる仕事は多い。ありがたいことだ。
粧し込んだ姿に「ブラックスワンみたいでしょ」と笑う彼女。
ブラックスワン?と首を傾げつつも、スラリとした手足が映える黒いドレスを纏ったその姿は、たしかにとても綺麗だった。
綺麗にドレスアップした姿、で思い出すのはやはり新人賞を取った時。もう何年前だろう。
「覚えてる?授賞式んときの安ピンワンピース事件とか」
「あ〜、ワンピースのサイズでかくて仕方ないからウエストとか安全ピンで止めまくったやつだよね、直前の楽屋で」
「そう、瑞希ちゃんより天ちゃんがめっちゃ焦ってたよね」
「そのあと小野さんとかに後ろ姿がサイボーグみたいって笑われたんだよね〜」
「懐かしいね。俺あれで緊張解けたな」
「そりゃよかった」
たしかそのときのワンピースは無難なネイビーだった気がする。
台本に目を通しながら、懐かしいねと笑う。
あの頃はお金がなかったし色々ギリギリで生きてたけど、今ではそれも笑い話だ。
「いつかラジオとかで笑い話にしようね」っていいながら、お互いのボロアパートで読み合わせしてたあの頃が少しずつ現実になる。
「うーん、結婚したら色々変わっちゃうんだろうな。そう考えたら今のままでいたいなあ。今が一番楽しいから。」
安い発泡酒の空き缶に水を入れて気分だけ味わいながら、彼女ははにかんでいたのをよく覚えている。
思い返せば、思い出話にはたいてい瑞希ちゃんがいる。
「花江くん結婚してからなんか変わったね」
「そうかな」
「うん」
「瑞希ちゃんもそのうち、わかるんじゃないかな」
そのうちきっと。
今日のことをいつか思い出したときに、また笑い話にできたらいい。
そのとき、彼女が纏うドレスの色が白だったらいいなって
余計なお世話だと臍を曲げられそうだけど、いつかそんな彼女を見届けたいなって、思ってしまうのが親友ってもんだ。