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「応援上映に行きませんか」
それはそんな一言から始まった。
なんて、ちょっと仰々しい言い方したけど別にそんなものではない。飛鳥に応援上映に行こうと誘われたのだ。
え、てか俺?俺でいいの?
「いいけど……なんで俺?」
「ジョージと行きたいんだジョイ」
「飛鳥の推しがユキ様ってことは知ってるんだからな」
「いやあ……声って、大事ですよね…」
そう言うと何故か遠い目をした飛鳥。
「サイリウム貸してあげますから」と言う飛鳥は珍しく笑顔だった。女性声優なんてみんなにこにこしてるのに、こいつ笑わないもんなあ。貴重だ。
たしか恥ずかしくて上手く笑えないとか言ってたような気がする。せっかく可愛いのに勿体無い、なんて俺が思っても仕方ないのである。
「平日の昼間なら人も少ないですし、よくないですか?」
「飛鳥様の頼みなら行きますよ、俺は」
「へへ、ありがとうございます。嬉しいです」
なんだこれ、癒しか。
てか俺が大丈夫か?飛鳥と歩いてたら犯罪と思われそう。誘拐ではありません。彼女はれっきとした成人女性です。
▽
都内の劇場に入ると、やはり平日だからか人は少なかった。適当に飲み物だけ買ってスクリーン2に入る。人は疎らだ。3人組の女性と、男性が何人か、それと俺のようなおっさんもいた。本当にこの作品はいろんな人が観てるなとつくづく思う。
俺らの席はわりと前の方。幸いにも近くには他に客はいなかった。
「周り気にせず応援できますね」
「けっこう声出す派?」
「んー、普通です。お決まりのところと歌とユキノジョウのところだけですかね」
ガチだよこの子。普通って言ったけど普通ではないよ。
「さっきはああ言いましたけど、ジョージけっこう好きですよ、私」
「えっ」
「顔が好きです」
「顔かよ!わからんでもないけどな!」
高田馬場ジョージなんてふざけた名前してるのに顔は良い。なんてったって歌唱はこばたつくんだしね。いや、なんかもうイケメン要素しかなくね?あれ?もしかしてジョージイケメン?
いや、ジョージはイケメンだよ。
「杉田さん?大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫……」
「実は私もガヤで出てるんですよー、知ってました?」
「え!それは知らなかった!」
もともとプリリズのほうにちょっと出てたので、と鞄をゴソゴソと漁っている飛鳥に少しだけ驚いた。そうだったんだ。じゃあそれにも注目して観よう。
はい、と渡されたサイリウムはプリパラのライブのやつだった。まあ、飛鳥出てるしな、うん。
「楽しみですねー。もう何度か観ましたけど」
「ちなみに何回?」
「今回のは忙しくてあんまり行けてないんですよね…今日でまだ7回です」
「うん?もう感覚麻痺してるぞ?」
「応援上映は久々です」
やっぱりガチじゃん飛鳥さん。それほど中毒性があるのは理解できる。俺らが同じゲームを何回かやるのと同じなんだろう。
(せっかくだし、俺もちょっと声出してみよう)
勝手はわからないけど、合いの手くらいならいける。たぶん。
ちらりと隣を覗き見ると、心なしか目が輝いてるように感じた。茜飛鳥、やっぱり可愛いんだよなあ…。俺本当に一緒にいて大丈夫だろうか。後ろから刺されない?四方八方から石投げられない?大丈夫?
「あ、そろそろ始まりますよっ」
……今は無心で煌めきを浴びることだけを考えよう。そうしよう。