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よく、壮馬と飛鳥は本当に付き合ってるのか不思議なくらいそれらしい素振りを見せないと言われたりする、らしい。らしい、というのは壮馬が何となく言っていたような気がしたからだ。事実、俺も最近まで知らなかったわけだし、それはそれで納得なんだけど、実は注意して見てみると"それ"があったりする。

たとえば、ほら、今日も多分、これだと思う。


「飛鳥、それ壮馬のでしょ」

「……やっぱりわかります?」


マスクを顎に引っ掛けたままの飛鳥は、シンプルなニットを着ている。それが壮馬のものだと気付いたのはきっと俺だけだ。

急いでたら間違えたという飛鳥の袖は指先が出るくらいで、少しぶかっとしてるけど違和感はなかった。普通にオーバーサイズで着てるのかなと思わせるものだ。


「こんなの持ってたっけって思ったら壮馬くんのでした」

「いいんじゃない?似合ってるし」

「うーん、でもこれ、壮馬くんの匂いがして落ち着かないです……」


ほらまた。こういうこともわりとすらっと言ってしまうのだ。本人に深い意味はない。ごく自然に、それが当たり前のように紡ぐ。それ故に知らない人が聞いたら、ああそこまで仲が良いのかくらいにしか思われない可能性もあるだろう。
それは違う。周りが思ってる以上にこの2人はお互いが大切で、たぶん俺なんかもわからない深い領域で想いあっている。

壮馬も飛鳥も、とても器用だ。

愛情も嫉妬も見えなくして、だけど確実にそれは渦巻いているのだろうと思うと、どこまで、と少しだけ怖くなる。きっと他人は考えてはいけない部分なんだ。


(あ……あー……)


それらしい素振りを見せない、ね。

飛鳥の首元の、見えそうで見えない場所にある痕に気付いてしまって、この身長はやっぱり不便だとため息をひとつ。あんなに誠実そうでも、やっぱり壮馬もちゃんと男なんだよな。控えめでもきちんと主張する独占欲に思わず苦笑してしまった。

洋服といい、痕といい、俺の女だから手を出すなって言われてるようなものじゃん、これ。


「……バカップルめ」

「ん?何か言いました?」

「なんでもなーい」

「……?」