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初めて会ったのは雄馬の方が先だけど、仲良くなったのは私の方が先だと思う。だってあの子、雄馬のこと苦手だって言ってたんだよ。
飛鳥との初めましては雄馬と同じ現場だった。最初の印象は、取っ付きにくそうな人。表情がほとんど変わらないし、静かに隅の方に座って台本を確認していたからだ。小さくて可愛らしい顔立ちなのにもったいないなと思ってしまった。後で聞くと夕飯のことを考えていたらしい。さすがになんとも言えない気持ちになった。
雄馬は飛鳥によく構う。ちょっかいを出す、と言った方がいいのかな。一度、好きなの?と聞いたことがあるけど、そのときは「好きというか構いたくなる?放っとけない?」とハテナ付きで返されてしまった。まあでも、わからなくはない。世話を焼きたくなるのは私も同じだ。
飛鳥は話してみると案外面白い人だった。真面目にボケる。私は天然だと思ってるんだけど、それを言うと怒られてしまう。本人は認める気ないみたい。
「あの、ごめんね。ちょっと面倒くさい」
「うーん……そうだよね」
正直面倒くさいよねという会話をしたことがあった。まだそんなに話したことはなかったけど、雄馬という共通点があるからこれは一度話し合わねばと思いついたのだ。
弟がすいません、と頭を下げると慌てて「真礼ちゃん、大丈夫だよっ」と逆に心配された。最初の印象とは程遠い人物だし、やっぱりいい子だなあ、と沁みた。
「面倒だけど、でもこんな私に根気強く話しかけてくれるってのは、相当物好きだと……」
茜飛鳥という人間はあまり自分を大事にしていないように見える。常に一歩後ろに立ち、自分を後回しにする。それは今でもときどき垣間見えてしまう。
私は、この子にはもっと自分を大事にしてほしいと思う。他人がわからなくても、私にはわかってしまうからね。
「弟さんは、とても優しいよ」
飛鳥は知ってるかな。あいつ、なんだかんだで飛鳥を優先するんだよ。雄馬にとって飛鳥は唯一無二で、失いたくない女の子で。あの子が自分を大事にしないぶん、雄馬が大切にする。まあ、それは飛鳥の彼氏さんにも言えるけどね。
でもね、うちの弟だって負けてないでしょ。
「はい、今日は姉さんなうって呟くよー」
「じゃあ私は飛鳥なうーっと」
「真礼ちゃん、パフェ頼んだら半分食べない?」
「いいの?食べる!」
もちろん私も飛鳥を大切に思ってるよ。なんたってモンペ、ですからね。これ誰が言い出したか知らないけどなかなかに的を射てるんじゃないかな。
さぁ、雄馬には飛鳥とのラブラブな写真でも送り付けてやろーっと。