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ひとつのマイクで一緒にレコーディングをするということで念を入れて飛鳥ちゃんと話し合う。ハモりの部分とか、繋ぎとか、やっぱりこの子とは歌いやすいなと改めて感じた。
飛鳥ちゃんも同じことを感じたのか「花江くんとだとやっぱり楽しいな」と呟いた。彼女の言う"楽しい"は、きっといろんな意味が込められている。
「そういえば壮馬、どう?」
「どうって…珍しいね、花江くんが聞いてくるの」
「いやあ、だって本当に付き合ってるのか不思議で」
あまりに自然すぎて。
隠そうとしているわけでもなく、公言するわけでもない2人に、たまに手を繋いでいるところとか見てしまうとああ付き合ってるな、と妙な感覚に陥ってしまう。
冷めていそうに見えるのはその自然さからなんだろう。まあ、実質そう見えるだけってのが真実だけど。
「いつも通り、壮馬くんはかっこいいよ」
こういうところも茜飛鳥独特だ。何もおかしくないとばかりにかっこいいと言えてしまう。そこに少女のような恥じらいや照れはなく、当たり前のように言い放つ。本気でかっこいいと思ってるからこそ出る言葉で。
本人の前では絶対言わないのも特徴的だ。
「できた彼女だなあ」
「いや、私なんて全然だよ。仕事セーブして家で甲斐甲斐しく待ってる人とかいるじゃん」
「ああ、あるね」
「私はたぶん、そういうのはできないなと最近思うようになった」
「最近?へー、意外」
「んー…だから、もしかしたら、ね。結婚は、無理なのかなあって」
私、花江くんに何言ってるんだろう、と急に我に返った飛鳥ちゃんに俺は正直に驚いた。なんとなく、触れちゃいけない話題かと思ってたけどいいんだ。いや、プライベートなことだし、あまり踏み込むのはよくはないけど。
「仮にね、何があるかなんてわかんないけど、このまま順調にいけば仕事だって増えると思う、んだよ」
「うん。そうだね」
「その可能性を潰して、私が演じるはずだった役を他の子に取られてしまうのは……あー、ごめん。やっぱり私おかしいかも」
少しだけ恥ずかしそうに「今の忘れて」と苦笑した飛鳥ちゃんに少なからず感動している自分がいた。
物静かで淡薄なイメージがあったけど、内に秘めてるものは意外と熱いんだな。もう短い付き合いとは言えないけど、新たな一面にまた印象が変わった。
「…だから、自分のことしか考えられないうちは、そういうのは無理だよ」
「俺はそれでもいいと思うけどね。別に家にいるだけが正しい形とはかぎらないし」
「……そう、かな。それでもいいのかな」
「まあ個人的には飛鳥ちゃんと仕事できなくなるのが寂しいだけだったりするんだけどね!」
「えー、本当かなあ〜」
「本当です〜」
茜飛鳥の可能性をもっと見たいのは本当で、それは俺だけじゃないのも知ってるから。
その中に壮馬も含まれてるはずで。
「まあ、気長に考えるよ」
「そう言ってる間に30超えちゃうぞー?」
「うわあ、それはこわい」
これほど相性のいいそれは見たことないからいっそのこと早く結婚しちゃえよと思うけど、如何せん2人ともマイペースなところがあるからなあ。暫くおめでたい報告は聞けそうにないや。