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朝支度をする彼女の後ろ姿を見て、ふと思いついてしまった考えに俺どうしたんだと自問自答。さらりと揺れる髪があまりに魅力的で、触れたくなった。


「え?壮馬くんが?」


先程思いついたことを飛鳥に告げると目を丸くして驚いていた。たしかに今までそういうことはなかったし、正直上手く出来る気はしない。

髪を結いたい、なんて、俺どうかしてる。


「どうしたの。やってみたくなった?」

「んー……そんな感じ?」

「時間まだあるし…じゃあ、お願いします?」


ソファーに座って髪の毛を後ろに持ってきた飛鳥の後ろに回って、はてどうしよう。そもそもやりたいなんて言ったけど、どうやってやるんだろう。

てきとうでいいよ、なんて言うけどそんなことはできない。せっかくなら可愛くしたい。いや無理だろうけど努力は、する。うん。


(よ、よし、)


艶のある髪の毛に触れると、思った通り柔らかくて指通りがいい。仄かにシャンプーの香りがしてきてちょっとだけ、どきっとした。(飛鳥さんごめん)

とりあえず、普通に一本で結ぶのは普通すぎるし、二つ結び?でも二つ結びは余計に子供っぽく見えるからあまりしないとか言っていたような。三つ編み、は……駄目だ、複雑すぎ。それこそ上手くできない。


(うーん……ハーフアップ……?)


よし、それで。ハーフアップにしよう。

と思ったはいいけど、これが意外と難しかった。掴む髪の束を調節しながらなんとか結び終わると少し右に寄っているように見えた。あれ、なんでだろう。
申し訳程度にリボンで誤魔化してみる。それでもあまりいいとは言えなかった。


「…終わった?」

「……一応。洗面所で見てきて」

「?うん。ありがとう」


勝手に意気消沈している俺を見て飛鳥は不思議そうにしていたけどそのまま洗面所へ消えていった。あれなら自分でやったほうがよかったよなあ。あとで結び直してもらおう。

洗面所から戻ってきた飛鳥は何故か嬉しそうだった。


「壮馬くんありがとうね」

「う、うん。ちょっとズレちゃったけど…」

「これくらい平気だよー」


じゃあ私ちょっと早いけどもう行くね、とそのまま家を出ようとする。

ちょ、え?そのまま?そのままなの?


「な、直さないの?」

「なんで?直さないよ?」

「……ズレてるし、不格好だよ」

「うーん……いい。せっかく壮馬くんがやってくれたんだし」


飛鳥は「じゃあ、いってきまーす」と最後までにこにこしながら家を出て行った。玄関の扉がぱたりと閉じるのを確認すると、はあ、と息が漏れて、そのままソファーに倒れた。赤いであろう顔を隠すようにクッションに顔を埋める。
何、もう本当、俺もこのあと午後からアフレコ一緒なのに。どういう顔したらいいの。


(……あー、もう、ずるいよ、飛鳥)





「……あれ、飛鳥さん髪どうしたの。今日時間なかった?」

「いや、余裕あったよ」

「え、じゃあそれもう解いたほうがよくない?」

「いやあ、はは。うん、そうだね」

「…………え?」