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夜も耽た遅い時間にただいま、と扉の開く音がする。おかえりとリビングから返事をすると「まだ起きてたの?」と驚かれてしまった。照明を落として薄暗い部屋でソファーに横になっている姿はなんだか頂けないけど、それもこれも深夜にやっていた洋画をなんとなくで観ていたらそのまま続きが気になってしまったからだ。明日の仕事が午後からっていうのもある。
暫くして部屋着に着替えて戻ってきた壮馬くんが隣に座ると仄かにお酒の匂いがした。
「飲んできたの?」
「俺は飲んでないよ。付き添い」
「あ、なるほど」
同時に少しだけ、甘い匂いがして、あ、これ女の子の匂いだと気付かなくていいことまで気付いてしまった。
別に、駄目とは言わない。壮馬くんにだって付き合いがあるし、私も男性と飲んだりする。さすがに親しい人意外とは、サシはないけど。
うん、大丈夫。今日は女の子と2人とか、そうじゃないはず。
「、飛鳥?」
「うん?」
「…機嫌悪い?」
「えっ……え?なんで?」
だってこっち見ないし今避けたじゃん、と苦笑が聞こえた。たしかに頬に触れそうになった指を避けてしまった。無意識の行動に悪いことをしたみたいに体が強張る。頭ではわかってるけど、やっぱりちょっとだけ、嫌みたいだ。
「飛鳥」
「……む、」
「え……俺なんかした?」
「し、してない。けど……」
「けど?」
ぐるぐると巡る思考で上手い言葉を探す。ああ、だめだ。恥ずかしすぎる。言った方がいいのかな。いやでも迷惑かも。できればこんな感情、向けたくないのに。クッションで顔を半分隠すと少しばかり落ち着いた気がした。
「…かわいい女の子の匂いがするの、や」
いや、もっと他に言い方なかったわけ自分。声震えてたし、もう洋画の内容とか頭に入ってこないわ。
壮馬くんはぽかんと固まって動かなかった。だから嫌だったんだ。もう、本当、なけなしの自尊心が爆発する。
「……か、わいい、な」
「……え」
「飛鳥こっち、見て。お願い。ねえ」
「う、ぅ……」
「女の人はいたけど俺は飛鳥しか興味ないし、触れたいと思わないよ」
「そ、そうまくん、」
「風呂入るから、そしたら触ってもいい?」
「……き、きかないでください」
宣言通り壮馬くんはそのままお風呂に行ってしまった。なんなら一緒に入るかと言われたけどそれこそ爆発する。色々。色々だ。
しっかりドライヤーで髪まで乾かしてきた壮馬くんが目を細めて私の腰を抱いて、そのまま逃がさないと言わんばかりに項に噛み付かれた。
「飛鳥が嫉妬してくれるなんて思わなかったな」
「っ……言わないだけだよ」
「言ってもいいよ。飛鳥がどんな思いしてるのか知りたいし」
「悪趣味だね……」
「はは、うん。だね」
もう匂いしない?と聞かれて大げさに頷いてしまった。
「明日、というかもう今日か。夕方からだよね」
「う、ん。そう、夕方」
「ならいいよね、うん、飛鳥が悪い」
「え、なっ、え!そう、」
「久しぶりだからあんまり加減できないかも。痛かったら言って」
涙目の私を見てにんまりと「かわいい」と呟く壮馬くんはやっぱり悪趣味だった。
でもそんな姿にときめいた私は大馬鹿者だと思う。
「拒んだ分、触っていいよね」
「そ、そんなに拒んでないよ…!」
「ふふ。えー?」
「う、うう…そうまくん…」
「あー、好きだよ。ほんと好き。ふふ、飛鳥ー」
も、誰か止めてくださいこの人。とっくに照れの許容範囲を超えている。どうにでもなれ。あ、駄目。やっぱりできれば翌日に響かない程度でお願いします…。