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ベランダからちょうど桜の木が見えて、小さいけどしっかり花が咲いている姿にぼんやりと眺めてしまう。夜桜鑑賞と言うには少し物足りないものがあるけど、軽く花粉症だからこれくらいがいいのかもしれない。
夜でもあたたかくなった風が頬を撫でていった。
「あ、いた」
「壮馬くん?」
「いないと思ったらここにいたんだね」
「うん。桜見てた」
「ああ、そこの桜かあ」
葉桜になる前に見ておきたくて缶チューハイ片手にベランダに出てきたってわけだ。「それ、ちょっとちょーだい」「ブドウ味だよ」「ん。うま」なんて、1本の缶を回しながら2人してぼんやり眺めることになった。壮馬くんも一緒に見るなら何か摘めるものでも作っておけばよかったなあ。お酒は冷蔵庫を覗けばあるはず。
月に照らされた桜はなんだか独特の雰囲気がある、と思う。とにかく綺麗だ。
「なんだかんだで毎年一緒に見てる気がする」
「たしかに。形はどうあれお花見してるね」
「飛鳥さん意外と季節事好きですよね」
「好きですよ。こう見えて」
「俺はその度に安心してるけど」
「?なんで、」
「言わない。ひみつ!」
「え!」
どういう意味なのかわからなくて知りたいけど「わからないならいいよ」と横目で見られた。なんだそれ。
思わず持っていたお酒をぐいっと飲み干す。そんなにアルコール度数が高くないお酒だけど、少しだけくらりと揺れた。
「あ、こら。イッキは駄目だって」
「ふふ、壮馬くんもう飲めないね」
「……飲めるよ」
しゃがんで、と手を引かれると一段と視界が暗くなる。なんでベランダでしゃがむんだろうと考えていたらするりと頬に手を添えられて、唇を塞がれた。
ああ、飲むって、そういうことね。
「ん、んっ……」
「っ、は…舌、……ん、そう、」
「っ……、」
誰に見られる訳でもないのに隠れて、家のベランダとはいえ外でキスしてる背徳感に心臓がはちきれそうなくらい早く動いてるのがわかる。これ、だめだ。お酒が入ってるのも相まって、なんか色々だめだ。いけないことをしてるみたいな気持ちになる。
桜を見ていたはずがいつの間にかこんなことになって、花よりナントカってやつ。
もう壮馬くんを煽るのはやめます。はい。
「飛鳥、」
「……だ、だめ。今日はだめ」
「なんで?」
「な、なんか恥ずかしいから……」
「大丈夫。かわいいよ」
「あ、あの、ほんとだめだから…あの…」
「……今ので完全にきた。はい、行きますよー」
「そ、そうまくん……!」