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この季節になると髪の毛が鬱陶しくなるけど我慢。前髪だいぶ伸びてきたなあ。切らなきゃ。
最近、家ではもっぱらピン留めで前髪をあげている。そのせいかわからないけど、額辺りに視線がくるようになった気がする。誰のってそれは1人しかいない。
「……またおでこ見てた」
「いや、可愛いおでこだなあって」
「普通のデコです」
「触りたくなっちゃう」
「やめれ」
額に伸びてきた手を掴んで下ろさせると、逆に手首を掴まれて、動脈部分にカリッと軽く爪を立てられる。それがくすぐったくて腕を引っ込めた。
「わんっ」
「……えぇ?」
この人は何をやっているんだ?
おもむろに犬の鳴き真似をした壮馬くんは「構ってほしいってことですよ」と爽やかな笑顔で言い放った。
「暇なの?」
「いや、やることある」
「え、じゃあ構えないよ」
「はー、ちょっと構ってくれれば頑張れる。俺めっちゃ頑張れるのになあ」
「……」
「こんなの飛鳥にしか頼めないのになあ!」
「あぁ、もう、わかったから!構い倒してあげるよ!」
「これだから飛鳥さんやめられねぇ」
「私がやめられないって日本語おかしいよ」
「じゃあ膝かして」と言われて一瞬、怯むも壮馬くんのためだと思い、恥をしのんで膝を叩く。もうこの際、なんでもありだ。
言葉のわりにゆっくりと優しく膝に頭を乗せる壮馬くんはつくづく壮馬くんだなと思う。私の日本語もおかしいから人のこと言えない。
前髪を掻き分けて額を撫でると「んふふ、」と笑う声が聞こえた。
「飛鳥さんも触りたくなっちゃいました?」
「なっちゃいましたねえ。これは可愛いかも」
「えー、いや、恥ずかしいな」
「すごい良いよ」
「飛鳥もね」
額辺りの横髪に触れ、そのまま耳に掛けられる。少しだけ目元がとろりとした壮馬くんは可愛い。眠いのかな。最近一段と忙しいしなあ。
「ごめん……10分したら起こして……」
「ん。おやすみ」
「んー……」
そのまますぐに眠りに落ちた壮馬くんの顔に掛かってしまった髪を避けながら寝顔を眺めていると、何だか私まで眠くなってきてしまった。
あぁ、だめだ。10分経ったら起こさなきゃいけないのに。……あー、でも、壮馬くん気持ちよさそうだなあ。いやいや駄目だって。
(ちょっとだけ……5分、5分なら大丈夫……)
結局、2人して3時間丸々寝てしまい頭を抱えることになるのだった。