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明日は待ちに待った全休日で、マネージャーに頼み込んで飛鳥と同じ日にしてもらった。何故って、誕生日にもらった"プレゼント"を使いたくて同じ日にしてもらったって理由だ。俺の1日をもらう、すなわち飛鳥の1日をもらうってこと。
「普通にデートしようよ」と誘うと飛鳥はきょとんとして固まった。
「いいの?」
「なんで?いいよ」
「壮馬くんと出かけるの久しぶりだから驚いた」
「驚くことかなあ」
「いま嬉しさを噛み締めてる」
なんだこの可愛い生き物は。こっちが驚いたよ。
「ディズニー行こうよ。これも久々でしょ」
「わ、わ、本当に?行きたい」
「うん。行こう。ちょっとだけペアルックでもいい?」
「いい、いい。バケツどこ置いたっけ……」
嬉しさが勝ってるのか、ペアルックという言葉は上手く流されたみたい。普段だったらぜったいやらないからむしろ好都合だったりする。
オーバーサイズのパーカーと、色違いのスニーカー。用意周到だって?こういうときに備えて準備しておいたんだよ。
▽
翌日。早起きした飛鳥はすんなりとパーカーを着てくれたけど、さすがにスニーカーを見たときは何か言いたげで口を開きかけてやめていた。
ポニーテールを前回ランドに行ったときに購入したシュシュで纏めて、首からポップコーンバケットを提げた飛鳥は意気揚々と俺を見上げた。
「楽しみすぎてあんまり寝れなかった」
「知ってる。俺はけっこう普通に寝ちゃったよ」
「知ってるよ。わりと早めに寝息が聞こえてきてちょっと笑ったから」
「健康だからさ〜?」
「なんだそれ羨ましいな〜」
なんだかんだ言って2人ともテンションが高い。飛鳥はイベント事になると夜眠れなくなる子供みたいな感じだけど、きっちり起きて支度をするから侮れない。そして寝起きがいい。悪いときのほうが珍しいくらいだ。
「若井ちゃんと斎賀さんと来た以来かも。2人のおかげでだいぶ詳しくなった」
「一時期ディズニー映画ばっか見てたのって2人の影響だったり?」
「そうそう。聞くと見たくなっちゃう」
月イチで映画を見る日を作って、お互いのおすすめ映画を観るという会をやっていた。美術の面に造詣が深い彼女がおすすめする映画はどれも画面構成が美しく、どこか独特の雰囲気のものが多かった。
それが一時期、ディズニー映画が続く月があったのだ。不思議に思いつつも映画は面白いため、聞くのを忘れていた。
2人の影響だったわけね。それなら納得だ。
「よし、到着ー」
「遊ぶぞー」
「お手柔らかにお願いします」
「え?」
指先だけでゆるく手を繋いで、パーク内を歩く。あっちこっちと珍しく手を引く飛鳥が可愛くて仕方ない。わくわくしたような表情も隠しきれてなくて良い。いやあ、普通に可愛いよね。俺の彼女最高に可愛い。言うと怒られるから心の中で唱えとく。
「あ、パレードやってる」
「お、本当だ」
「ダンサーさんの衣装かわいいな」
「飛鳥、飛鳥。ミッキーいるよ」
「うわ、かっこいい……」
乗り物の上で踊るキャラクターは軽やかで魅力的だ。「パーク内で見るミキさんってすごいかっこいいんだよね」と笑う飛鳥に頷く。たしかに。いや、それにしてもミキさん呼びは地味に気になってしまう。
壮馬くんの誕生日プレゼントなのに、と自分ばかり楽しんでいる様子に苦笑していた。俺は普通に楽しんでるし、飛鳥が楽しければさらにいいと思ってるからそれでいいんだ。今日、けっこうはしゃいでるみたいだし、こんなに嬉しそうな飛鳥見れるのって年に1回あるかないかだからね。貴重だよ。あとで1人で恥ずかしくなって沈むんだろうけど。
何個かアトラクションに乗って、軽く食べ歩きをしながら過ごしているとあっという間に夕方になってしまった。時間が経つのが早すぎる。
「そろそろ帰る?お土産買う時間も考えて、」
「そうだね」
「明日朝からだよ」
「んー……」
「……え?」
「それなんだけどさ、」
目を瞬かせて頭にハテナを浮かべた彼女は「んん……?」と考えを巡らせてるようだった。
「着替え持っていこうって言ったじゃん」
「濡れるショーあるかもって言ってたからね。時期的にちょっと早かったんだけど、」
「うんうん」
「……ん、え?何、わかんない。どういうこと」
「あのー、ね?」
「うん?」
「今日は帰りません」
「……ん?」
考えあぐねていた飛鳥はやがてハッとして此方を凝視する。そんな、でも、と動揺している彼女にトドメをさすようにスマホの画面を見せると今度こそ本当に固まってしまった。
ホテルの予約画面。以前からマネージャーと相談して、事前に取っておいたのだ。一度でいいからディズニーのホテルに泊まってみたいと言っていたセリフを思いだす。あのときはなんとなしに放った言葉だったんだろうけど、ちゃんと覚えてましたよ。
「なんっ……だって、明日、仕事……」
「2日も休みもらっちゃった。贅沢だよね」
「朝から収録入って……」
「あ、それ嘘。ごめんね。ちなみにマネージャーもグルだよ」
「……ほ」
本当に?と恐る恐る見上げてきた飛鳥はどこか不安そうで、だけど期待が入り交じったような顔をしていた。
「1日中一緒にいて、その後は好きにしていいんだよね?」
「そっ……いや、言ったけど……!」
「だから好きにします。次の日は飛鳥の1日、俺にください」
「う……」
「……だめ?」
瞬間、どぱっと顔が赤く染まると両手で顔を覆って、だめじゃない、ととても小さな声で呟かれた。
この反応が見たかったって言ったら、怒られるかな。
「あとでマネージャーに電話しよう……」
「帰ってでもよくない?」
「駄目だよ。ちゃんとお礼しなきゃ」
「あぁ、ふふ。そうだね」
「……何笑ってるの」
「ふふ……うん?なんでもなーい」
「なんでもなくなーい」
「真似するなよ〜」
「いや、なんか楽しくなっちゃって」
「あはは、そうだね。わかるよ」
俺も今が最高に楽しいよ。