「ごめん、でも、そんな、いきなりすぎる。」

及川くんは暫く固まっていたが、ポツリとそういった。

「なんで?」
「な、なんでって・・・名前ちゃんは?#name2#ちゃんは何かないの?
だって俺達、」

『付き合ってるでしょ?』
及川くんは悲しそうな顔をする。何を言ってるんだか、っていうのが私の気持ちだけど。
付き合っているからなんだというのだ。そもそも付き合っているの定義ってなんだ。
私の認識では、双方又は片方が恋愛感情をもって双方の合意の下で成り立っている関係、だと思うんだけど。

そうなると、今の私たちはそれに値しないじゃないか。

「私は大丈夫。」
「え?」
「結論にたどり着いて5秒で君を諦めました。」
「ねえそれほんとに俺のこと好きだった?!」
「好きだったよ。」
「え、」

私は及川くんのことが好きだった。確かにあれは、好きだった。恋愛感情を抱いていた。
その事実は絶対に変わらないし、実際今だって浮気されたからといって・・・可笑しいけど嫌いになったわけじゃない。
吹っ切れたってだけだ。
今は、確かに好きだけど恋愛感情と呼べるほど青春っぽいものじゃあない。友達として背中を押せるような、そんな"好き"。

「しかし好きな相手の幸せのためならば私は何でもできるよ。」
「#name2#ちゃん…」
「なので別れよう。」
「いやだから待とうよ」
「私を止めないでくれ…!」
「いや止めるよ?!」


及川くん、お店の中で大きな声は控えようね。
そう言うと、及川くんは『げっ』と言って周りを確認してから、『誰のせいだ!』と小声で言った。
その声は小さくなってて、ちょっと面白いなと思った。



「これからは一人の友として君の恋愛を応援することにします。」
「もう友達に戻れると確信までしてるの?!君ちょっと吹っ切れすきじゃない?!」
「え、友達に戻れない程私に興味なくなりましたか?!流石に傷つく…」

だってもうそんなの好きを通り越して嫌いとかじゃん。私なにかしたっけ?!
意味がわからないだけあって流石にきついものがある…。



「いやそうじゃな、あ〜もうややこしいな〜!」



及川くんは、髪の毛をガシガシと乱す。
あ〜、絶対その髪、朝時間かけてるだろうに。私のせいだな多分。ごめん、なんか。
一人で何やら頭を抱えている彼を眺める。

「俺は!まだ君と別れるなんて、言ってない!」
「私は言ったもん。」
「相互の了承を得ましょうね!!」


なんと、まだこの男は承認していなかったのか。
なんでだ、彼にとって悪い話じゃないし、何より誰も損をしないじゃないか。解くしか生まれないのに、この提案では。


「とりあえず、そちらの納得可能な理由を述べよ。」

私がそう言うと、及川くんは ぐ、と言葉を詰まらせた。
チュー、と私のストローの音が鳴る。

「…まだ、別れたくない、から。」
「ブッブ〜文字数が足りませ〜ん。意味も理解できませ〜ん。」
「ったくも〜!!なんだこいつ!!!」

ああ、別れ際にこんな会話をしているのはこの世で私たちくらいなんじゃないかな。
しんみりとした雰囲気はもうない。まるで友達みたいに話している。

最初っから私たちはそうだった。恋人になりたての時だって、初々しい雰囲気とかなったことないし。ましてや手をつないだこともない。イベントとしては、一緒にお昼ご飯を食べたり一緒に帰ったり、私がお菓子をあげたりとか・・・あれ?もうこれ友達同士とやってることそんなに変わらなくない?

それに及川くんは別の子が好きと来たもんだ、もう条件なんかそろっている。別れて何がまずいんだろうか。



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