◎第2話
はれて緑谷家の一員となった私は出久と変わりなく愛情を注いでもらい、無事に小学3年生となりました。
久しぶりのランドセルはなんだかくすぐったかったけどなんか楽しかった。勉強は2度目だから楽勝!とか思ってたら甘かった。x使えない算数って難しいね。他のはなんとかなるんだけどこれだけはもどかしい。2年生までは楽勝だったんだけどな…。
「おいテメェ!俺と勝負しろ!」
これがなければなぁ……。
かっちゃん少年改めて爆豪勝己はあの日以来私に勝負を仕掛けてくる。それはもう草むらの虫取少年のように。鬱陶しいんだよねあいつら。まぁ毎回逃げるんですけど。
「最強の作戦考えてきたんだ!今日は逃さねぇぞ!」
「勝己は強いよー私なんかよりずっと強いよーだからもーやめよーよー私の負けでいいよー。」
公共の場での個性使用は禁止されてるんだよ!勝己捕まっちゃうよ!
「嫌だね!俺が最強なんだ!女のお前に負けるかよ!行くぞ!」
「やだー。」
でもこの勝負のおかげでカード達の使い方が上手くなったのは事実。いかに攻撃をせず最速で逃げられるか、それが重要なんです。勝己の"個性"は強い。一発でも当たれば火傷は確実。痛いのは嫌だ。だから、
「我が身を守る盾となれ'盾(シールド)'!」
これで守っといてあとは'跳(ジャンプ)'で全速力で逃げる。これが常套手段。大概これでなんとかなる。
「いつもと一緒じゃねぇか!逃げんな!」
「勝己のやつ当たったら痛いもん。」
「なら解かざるを得なくしてやるよ!」
そう言うと勝己は地面を爆破した。いつも向かってくる一方だった勝己がちゃんと考えてる。これはいつも通りにはいかないかも。
勝己は頭がいい。それは二度目である私と同じくらい、いやそれ以上に。その勝己がちゃんとした作戦を立てている。私も甘くみてたら負けるかもしれない。とりあえず飛び上がって、
「戒めの鎖となれ'風(ウィンディ)'、ってあれ勝己どこ?!」
「後ろだぁ!!」
「嘘ぉ?!」
いつの間に回り込んで……そうか地面崩して視線を外させて爆発を使って飛び上がったのか。なんてことを一瞬で考えて体勢を立て直そうとするけど私にはそんな運動神経なくて。なら"地(アーシー)"で足場を……、
「させねぇよ!!」
目の前で爆発が起こる。とっさに顔を腕で覆ったけどほっぺが痛い。火傷したかな……。受け身の取り方なんて分からない私はべしゃりと地面に落ちる。
「…………勝った。」
華麗に地面に降りた勝己がぽつりと言った。
「勝ったぞ!名前に勝った!やっぱ俺がいっちゃんすげぇ!!」
「…………だから言ったじゃん、勝己の方が強いって。」
この子、すごすぎるでしょ…。ほんとに4年生?戦闘センスずば抜けてる。勝己はやっぱ天才だった。でもそれだけじゃない。よく見れば筋肉だって他の子よりもついてるし、手なんか傷だらけだ。きっとすごい練習したんだろう。そのセンスに見合う努力もしてるんだ。
「勝己、すごいね。」
「あぁ?当たり前だろ、俺は最強のヒーローになんだからよ。」
「なんか、勝己かっこいいね。」
「はぁ?!」
真っ赤になって暴言を吐くところはまだ子供だけど。笑うと頭を叩かれた。痛い。
「勝己ぃぃぃぃぃぃ!」
「ゲッ!ババア!」
すごい速度で走ってきたほは勝己ママ。そしてその後ろに出久。誰がババアだ!と拳骨で殴った。すごい音がしたよこの子供にこの親あり。叱るのも全力。
「なっちゃんのほっぺたがぁぁぁぁ!!」
「ちょっと擦っただけだよ、大丈夫。泣かないで出久。」
手加減はしてくれてたのかそんな傷にはなってない。ほうっておけばそのうち治るでしょ。
遅れて出久ママが登場。出久と同じ反応をする。うん、親子、じゃなくて、事態は大事になってしまった。子供の喧嘩だよ。だからそんな絶望した顔しないで勝己ママ。
「名前ちゃんの可愛い顔に傷つけてアンタ責任とれんの!」
「はぁ責任?」
「そうよ!顔に傷があるからって可愛さには変わりないけど万が一億が一お嫁さんの貰い手がなくなったらどうするの!責任とれるの!?うちに来てくれるのは大歓迎だけど!!」
「うっせーな!責任でもなんでもとってやるよ!嫁の貰い手ねぇならもらってやるよ!!」
「え。」
「あら、勝己くんがお婿さんならお母さん安心ねー。」
「僕かっちゃんをお兄さんって呼ぶのやだよぉ。」
「あぁ?!デクのくせに生意気言ってんじゃんねぇよ!名前!治んなかったら俺がもらったるわ!分かったか!!」
「全然分かんない。 」
この事件はその後もちょいちょい浮上しては勝己がおちょくられる数少ないネタになった。
まぁ幸いこの後傷は綺麗に治って嫁騒動はなくなったんだけど。
「なっちゃん治ってよかったねー。」
「みんな心配しすぎだよ。」
「チッ。」
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