◎12匹目


ヘマをした。かすり傷だが怪我をした。病院に行くほどじゃないが地味に痛い。

風見への報告を済ませふらふらと安室名義のセーフハウスに行く。とりあえず近いのがここであっただけでどこでもよかった。疲れた。

任務は勿論成功だ。ジンも文句は言わないだろう。あぁ思考がまとまらない。とりあえず眠ろう。朝一で警察庁で会議だが2時間は寝れる。目を閉じればあちらにいけるのではないか。そんな一抹の希望を夢見て。


しかしそんな希望など簡単に崩れる。
起きたのは寝た場所と変わらず同じ所。せっかく向こうでゆっくり休めると思ったのに。彼女と周りを気にすることなく話せると思ったのに。

ふと我に返る。
そうか、俺は向こうに行くのが彼女と過ごすのが当たり前になるほどの回数を重ねていたのか。あの何でもない、しかし降谷零には訪れることのない平凡な日常は嫌いじゃない。




「降谷さん?ふるやさーん?」
「………なんでお前がいるんだよ。」
「なんで起き抜け一番にdisられなきゃいけないんですかね。仕事終わって帰ってきたら降谷さんがいてうなされてたから起こしてあげよっかなって。」
「……それはどうも。お前今帰ってきたばっかりか?」
「うん。帰ってきて降谷さんの可愛い寝顔撮ったばっかり!」
「消せ。」
「やーだ。いつも辛辣な降谷さんの可愛い一面が見れてラッキーでした。いつもは気配で目が覚めちゃうからさ。」

ニヤニヤ笑う顔がムカついてとりあえず叩いておく。もちろん本気じゃない。

「ゴリラのくせにか弱い乙女殴るのマジでやめてもらえませんかね!せめて力加減覚えて!!」
「そのネタ聞き飽きた。」

キーキー反論していたのにふと止まり、俺をじっとみる。睨み返すが効いてないのかへらりと笑った。

「おかえりなさい、降谷さん。」

おかえりなさい。
そんな言葉久しぶりに聞いた。胸の奥がじんわりと暖かくなった気がした。

「ただいま、名前。」




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