◎3匹目

絶対零度の笑みを浮かべる安室透。いやこの場合は降谷さんなのかな。バーボンかもしれない?
今時の強盗はコスプレするのか……。確かに目出し帽で顔隠すよりいいかもしれないけどさ、犯罪じゃん!!!お巡りさんこいつです!!

「この状況で考え事か?余裕だな。」

顔のすぐ横に足が降ってきた。ものすごい音した底抜けるかと思った裸足なのになんでこんな地響きみたいな音出るの怖い!!!やっぱコイツゴリラだったんだ!!ホンモノだ!!フルヤいたもん!!

「名前ー?すごい音したけどどうしたのー?」

ひぇっ!そりゃ下まで響いてるよな!!何でもないと叫びつつ目は降谷モドキから目が離せない。
いやいや落ち着け名前。この世界に降谷零がいるわけないではないか。いくら行きたいと焦がれた世界でも行けないのは分かってる。いやそのうち次元の壁を越えられるのではとか思ってるけどさそれでも向こうから越えてきてくれるはずがない。それになぜ、

「コナンくんじゃないの!」
「お前この状況を理解してないな。」

したくないから現実逃避してるんだよヴァカめ!!このネタ通じる人同年代だよ!!
はぁ、と大きなため息が聞こえて目の前に降谷モドキがしゃがみこんだ。張り詰めていた空気が和らいだ気がする。

「あ、あの…?」
「君がいない間に家の中は一通り探らせてもらった。もちろん、部屋にあった本棚の中も。」
「あ…。」

本棚にはたくさんの漫画が並んでいる。それはもう床が抜けるんじゃないかってくらい。その中にはもちろん、『名探偵コナン』も。

「中身、見たんですか?」
「残念ながら触れなかった。触ろうとするとバリアみたいものに弾かれる。ただし、」

降谷モドキは私から離れある引き出しを開けた。そ、そこは!!!

「み、見ちゃだめぇぇぇ!!!」
「気持ち悪い声出すな。これには触れられた。」

イケメンの手に握られてるのは私の家宝別名薄い本。安室さん×コナンくん。お前それ一番見ちゃあかんやつやで…。

「まぁ内容は置いておくとして、これは俺だろう。ならここは俺やコナンくんが登場する物語があるということになる。」
「正解ですが冷静ですね。」
「状況を分析した結果だが俺も事態が飲み込めてない。」

さすがトリプルフェイス。動揺も顔には出さないってか。と思ったが薄い本に釘付けなので案外本当に冷静なのでは。イケメンが自分の腐向け本読んでる…。なんか複雑。

「ということはあなたは本物なんですね……。」
「偽物がいるのか。」
「忠実なコスプレ。」

なるほど、と顎に手を当てるモノホン降谷さん。ひゃーリアルに出てきてもこんなにイケメンなのかぁ。輝いてるよ。プリズムの煌めきに溢れてるね。ジャンプ飛べそう。ゴリラだけど。

「ということはこれは2次元お約束の逆トリップというやつですかね。あむ、ふる、安室さんここにどうやって来たか分かんない感じですかね。」
「バレバレなんだな。どっちでもいいぞ。気づいたらここにいた。こっちじゃこういったケースはあり得ることなのか?」
「では遠慮なく降谷さん。普通はあり得ないですよ。憧れのファンタジーな世界です。」
「そうか…なら帰り方も、」
「分かんないですね。」

サクサク会話してるけど私の薄い本漁っては読むのやめてもらっていいですかね。余裕じゃねぇか。

「腐男子デビューおめでとうございます。」
「違うからな。これは情報収集の一環でだな。」
「諦めた方が楽ですよ。」

あ、それお気に入りのやつ。コナンくんが可愛いんだよ。オススメ!

「名前ご飯出来たよー!」
「はーい今行くー!」

下からお母さんの声がしたため振り向いて返事をする。おーなかすいたったー。

「じゃあすいません降谷さ、あれ?」

前に向き直ると安室さんは消えていた。私のお気に入りの薄い本と共に。

「…………許さん!!!」

コナンくんに見つかって軽蔑されてしまえ!!!



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